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これフラグ??
何かすっごいキラキラしてる。
Aさんの顔を見たオレの感想は、こんな間の抜けたモンだった。
絹糸のようにサラサラなハニーブラウンの髪は、肩口までの長さで、上の方だけ掬って、ハーフアップにしている。
長い前髪はセンターで分け、女子のようにヘアピンでアレンジしてあるが、女の子と間違いようもない男前だ。
色白で彫の深い顔立ちは、まるで彫像の如く整っているが、垂れ気味の目が愛嬌と色気を醸し出している。
全体的な印象として、女子が好きそうな甘い美貌のイケメン。
雑誌のモデルやテレビのアイドルと比べても遜色のない、華やかさを持っている。あまりにイケメンすぎて、現実感がない。
だからオレは、むしろ冷静になってしまった。
いつだか、二つ年上の従姉妹が力説していた恋愛シュミレーションのようだなあ、と、的外れな感想を抱く。
イケメンが道で行き倒れているシチュエーションを熱く語られた時は、思わず鼻で哂ってしまい、鉄拳制裁を喰らったもんだが……現実で遭遇するとは思わんかったわ。
この学校、すげえな……。
思わずマジマジと眺めてしまったが、イケメンは気にする素振りもなく、首を傾げる。
女子だったら、思わずウットリと見惚れてしまいそうな甘い笑みを浮かべ、オレの右手を指差した。
「それ、欲しいな」
それ、と指された己の右手を見る。
今のオレは、シンプルな紺色の巾着以外には、何も持っていない。ちなみに中身は、武藤の魔の手から守った弁当だ。
「これ……?」
軽く持ち上げて、オレも首を傾げて訊ねる。
「そう、それ」
何故イケメンが弁当なんぞを欲しがるのだろうか。
半信半疑で聞いたが、Aさんはお手本のように綺麗な笑みを浮かべ、頷いた。
「腹減って、動けないんだ」
お前はアン○ンマンか。
そしてオレはジャム○じさんか。
そう脳内でツッコミつつも、輝くような笑みを浮かべるAさんに、ニッコリと笑い返した。
「お断りします」
「……え?」
唖然とした声が、綺麗な形の唇から洩れた。
丸く目を瞠ったAさんの手からも力が抜け、オレはこれ幸いと、掴まれていた足を引き抜いた。
「ちょ、」
焦った声が聞こえたが、気にせずオレは歩き出す。
しかし数歩も進まずに、再び足を掴まれた。
「…………」
思わず、大きなため息が洩れた。
兄さん、ちょっとしつこいんじゃない?
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