Main 4 ※未来視点です。 安穏と暮らしていた僕には、彼の痛みは、欠片も理解出来ないんだろう。 小さな子供が、痛みと苦しみを飲み込み、孤独に耐えるような悪夢、 僕には想像もつかない。 「…それから成長して、健康になっても、その呪縛はオレにかかったままでした。 ―――あの子に、会うまで。」 そう彼は、嬉しそうに笑った。 少し幼く見えるようなその笑みに、初めて彼が、同い年の少年に見えた。 「あの、子…?」 その単語が、誰を指すのか。 …脳裏に、一人の少年が思い浮かぶ。 「………。」 彼は翠緑の瞳を、弓形に細め、笑みを深めた。 「……生まれて初めて、弱さを、受け止めてくれる人に、出会った。」 彼は、一語一語、愛しむように、言葉を紡ぐ。 その笑みが、 その声が、 その瞳が、 『あの子』への愛を、惜し気もなく、伝えてくる。 「オレの痛みも苦しみも、あの子だけが知っていればいい。……オレの傍には、あの子しか、いらない。」 狂気さえ感じさせる一途な瞳が、真っ直ぐに僕へと向けられる。 睨まれているわけでも無いのに、射すくめられたように、体が硬直した。 「…ねぇ?」 ゆっくりと、彼の瞳が、眇められた。 「……あの子は、何処ですか?」 . [*前へ][次へ#] [戻る] |