Main 2 腕組みをしたオレは、緩く頷いた。 芝生の上に横たわるのは、うちの学園の制服を身に纏った、長身の男だ。仰向けでなくうつ伏せなので、顔は見えないが。 つうか、この通路で人と会ったの初めてかもしれない。倒れているけど。 ……いやいやいや。 倒れているんじゃないよ。きっと寝てるんだ。 脳内で呟き、頭を振る。そして納得したように、うんうん、と一人頷くオレをもし第三者が見かけたならば、恐らく頭がおかしいと怯えられた事だろう。 確かに、芝生にうつ伏せで寝る人って、あんまり見ないけれど、個人の趣味にケチつけるべきじゃないだろ、オレ。 そう、寝方なんて千差万別。個人の自由、尊重される権利であるべき、なんて言うか、ぶっちゃけ面倒くさ……ゴホッ、ゲフン! 「…………」 そこまで考えて、オレは息を吐き出した。 ……あーあ。どーしよ。マジ面倒臭いんすけど……でも、一応見ちゃったしなぁ。 一応僅かばかりある良心の訴えに負け、オレは恐る恐る、物体X……ではなく、倒れている通行人Aに近寄ってみる。 植え込みを跨いで近づき、傍らに膝をつく。 覗き込んでみたが、起きる様子は無い。 「おーい。大丈夫ですかー?」 口の横に手をあて、呼びかける。 ……………………。 数秒待つ。沈黙が流れ、涼やかな風がふんわりと通り抜けるだけ。 返事は無い。ただの屍のようだ。 うん。オレ、やるべき事はやったよね! 会心の笑顔で、滲んでもいない汗を拭う仕草をした。 諦め早いとか、知った事か。 では、さようなら。倒れ伏す村人A。……あれ?通行人だっけ? まぁそんな事はどうでもいい。オレ、腹減っているんで、昼飯食いたいんだ。 合掌して軽く頭を下げ、オレは、すっくと立ち上がる。 成仏しろよと一瞥した後、教室に戻るべく歩き出した。 ……否、しようと、した。 ガシッ。 足を進めようとしたオレの体が、背後にがくんと引っ張られる。 「…………」 ……あれ、進めないよ? 何で? 何でって、それはね……。 何でか足を掴まれてるからさぁあ!! 「……!!」 ビビりながらも視線を落とすと、倒れていた人物が、オレの足首をしっかりとつかんでいた。 怖いんですけど!! 明るいうちだからいいけど、夜にやられたらホラー以外の何物でもない。ていうか、ぶっちゃけ、昼にやられても地味に怖い。 貞子かてめえ!! 「……ねぇ」 「!」 昼間に突如起こったジャパニーズホラーめいた出来事に、固まっていたオレに向け、声がかかる。 それは勿論、倒れ伏す村、……じゃなくて物体、でもなく……ああもう面倒臭え!!以後Aさんで!! とにかくそのAさんが、オレへ声をかけて来た訳だ。 「な……な、何すか?」 なるべく距離を取ろうとするが、足を掴まれている為、上半身が仰け反る形になる。 どもりながらオレが問い返すと、Aさんは、ゆっくりと顔を上げた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |