Main Side日下部 ※日下部視点です。 ――深夜、 私は、ある部屋の前にいた。 腕時計に目をやると、他人の部屋を訪問するには非常識にあたる時間帯を指している。 が、部屋の主は起きている確信がある私は、躊躇無くドアをノックした。 ――コンコン、 「…日下部です。」 ノックと同時に名乗る。 『…入れ。』 暫くして、中から低い美声が返ってきた。 渡されているスペアキーを使い扉を開けると、中から光が洩れる。 …予想通り、部屋の主は起きていたようだ。 リビングの皮張りのソファーに深く身を沈め、手元の書類を捲る男は、視線を此方に向ける事なく、短く問うた。 「…何の用だ。」 「遅くに申し訳ありません。…先程、下の者から受けた報告に、緊急性を認め…」 「前置きはいい。」 艶のあるバリトンが、低く切り捨てる。 「簡潔に纏めろ。」 「は。…セキュリティに、多少の乱れが出たようです。ほんの数秒なので、システムトラブルかとも思われますが、外部からの干渉の可能性も捨て切れませんので、ご報告させていただきました。」 . [*前へ][次へ#] [戻る] |