Main 天秤 「…………。」 「……。」 黙って俯いてしまったオレの頭を、後ろから、ぽん、と軽く叩かれる。 見るまでもなく分かる、武藤の優しい、手。 顔を上げると、心配そうな西崎と目があった。 支えられているって、実感する。 無くせないって、改めて思うんだ。 「……。」 ヘラリと笑うと、西崎は益々心配そうな顔になる。 きっと失敗したんだろうな、笑顔。 「……あ。」 「あ?」 わざとらしくも声をあげると、武藤がオレを見下ろして、視線で続きを促した。 「…センセにはお礼したけど、青さんにはまだお礼してなかった。何がいいと思う?」 「…知るかよ。」 わざとらしい話題変換にも、武藤は突っ込まないでいてくれた。 「だって青さん、甘いもの嫌いだし。…揚げ煎とかどうかなぁ?」 「…メールで聞け。」 「成る程。」 オレらが、いつもの調子で話してても、西崎は口を出さずに、顔を曇らせたまま、オレを見ていた。 …そんな顔、しないで。 大丈夫だから。 西崎のせいじゃないんだ。 身動き出来なくなったのは、オレ自身のせい。 大切なものをつくりすぎた、 オレの自業自得なんだ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |