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聞く前から、オレの返答が分かっていたであろう彼は、表情を崩す事無く、頷いた。
「…だよね。」
オレは、彼の方を、牽制するように睨み付けながらも、背後の撫子さんの様子を伺う。
当り前だが、顔色が悪い。…青を通り越して、白い顔色は、紙のようだ。
せめて、足の紐だけでもどうにかならないかと、手で引いてみるが、存外に、堅い。
「…なら君の口も、塞がなきゃね。」
「、…っ!!」
ヒヤリとする言葉に、彼を見ると、絡み付くような視線が、オレを捉えていた。
「…ああ、別に殺しはしないよ。『紗鞠』のご子息に、そんな真似は出来ない。…………要は、口外する気を無くせばいいんだから。」
仕方ない、という口調とは裏腹に、彼はとても楽しそうに言葉を紡ぐ。
「………、」
自分の身に迫る危機に、ゴクリと唾を飲み込み、オレは焦りながらも、彼から見えないよう後ろ手で、必死に撫子さんの足の紐の拘束を弛めようとする。
例え、どんな絶望的な状況でも、やれる事をやれ。
足掻け。
オレは、そう教わっただろう。
《陰/陽》という、大切な居場所で。
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