Main
2
尚久さんは、焦る様子も無く、無表情にオレを見下ろした。
爽やかで人当たりよさげな笑みを取り払った尚久さんの美貌は、人形じみていて、温度の欠片も感じられない。
ゾッと背筋も凍るような無機質な瞳が、不気味にオレをうつしていた。
「……こんな事、許されると思うんですか?」
呑まれないように、手のひらを握りしめ、静かにそう問うと、彼は僅かに首を傾げた。
「…許される?」
クッ、と口角を吊り上げ、尚久さんは嘲笑うように、笑んだ。
「別に、誰に許されずとも、構わないよ。」
さっきまでの好青年と同じ顔で、同じ口調なのに、今、目の前にいるのは、誰だ、と問いたい。
纏う雰囲気が、全く違う。
「僕は僕の道を阻むものは、何であろうと許さない。……ただ、それだけの事だ。単純だろう?」
歪んだ笑みを見ながら、オレは奥歯を噛み締めた。
この人が、好青年であるのは、表面上の事であると、薄々気付いていたのに、こんな事態に陥る前に阻めなかった己の腑甲斐なさが情けない。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!