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尚久さんは、焦る様子も無く、無表情にオレを見下ろした。


爽やかで人当たりよさげな笑みを取り払った尚久さんの美貌は、人形じみていて、温度の欠片も感じられない。
ゾッと背筋も凍るような無機質な瞳が、不気味にオレをうつしていた。


「……こんな事、許されると思うんですか?」


呑まれないように、手のひらを握りしめ、静かにそう問うと、彼は僅かに首を傾げた。


「…許される?」


クッ、と口角を吊り上げ、尚久さんは嘲笑うように、笑んだ。


「別に、誰に許されずとも、構わないよ。」


さっきまでの好青年と同じ顔で、同じ口調なのに、今、目の前にいるのは、誰だ、と問いたい。


纏う雰囲気が、全く違う。


「僕は僕の道を阻むものは、何であろうと許さない。……ただ、それだけの事だ。単純だろう?」



歪んだ笑みを見ながら、オレは奥歯を噛み締めた。


この人が、好青年であるのは、表面上の事であると、薄々気付いていたのに、こんな事態に陥る前に阻めなかった己の腑甲斐なさが情けない。


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あきゅろす。
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