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※日下部視点です。
「…念の為に聞くが、心当たりは無いか?」
「………………、」
志藤は、僅かに動揺しつつも、冷静さは欠いていないようで、思案するように視線を落とした。
「…………嫌な予感がする。」
やがてポツリと呟いた志藤は、踵を返し、母屋へと向かい走り出した。
その後を追いながら、私は志藤に問いかける。
「心当たりがあるのか?」
「いや…憶測に過ぎない。だが、父の出した条件を聞いて、尚久がどういう行動に出るか…とは思っていた。」
私は、その言葉に瞠目する。
志藤の発言は、『兄を疑っている』と宣言したも同然だ。
「…行儀の良さそうな兄君だったが。…そんな暴挙に出るか?」
「アイツは確かに優等生だ。枠を越えることを酷く嫌う…が、それ以上に、当主の座に固執している。…………、」
そう、育てられたからな。
志藤は最後にそうポツリと、苦く呟いた。
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