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Side 日下部
※日下部視点です。
「…………っ、志藤!!」
広大な敷地を全力疾走した私が、探していた姿を見つけたのは、離れの入り口付近だった。
振り返った志藤は、タレ目がちの金茶色の瞳を、大きく瞠る。
「……日下部?」
私が大きな声を出した事が意外だったのか、それとも息を乱す程全力で駆けた姿が珍しかったのかは分からない。
が、そんな事は、どうでもいい。
「どう…」
「お前の兄の婚約者を見なかったか。」
どうした?と続ける筈だったであろう言葉を遮る。
一秒だって、惜しい。
それは、いなくなっている少女の事が、心配だからでは無い。
私が心配なのは、
凛君だけだ――。
人の事ばかりに必死で、自分の傷を後回しにしてしまう彼が、無茶をしていないか、
それだけが。
「…撫子ちゃんが、いないのか!?」
志藤は、サッと顔色を変えた。
その反応から、志藤も少女の居場所を知らぬ事が容易に分かり、私はチッ、と舌打ちする。
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