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大して進まないうちに、尚久さんを見つけた。


物陰に隠れながら、そっと覗き見る。


スッと背筋の伸びた、姿勢の良い姿は、何故かしずかちゃんを思い出した。


「………………。」


ゆっくりと息を吸う。


静めようとしても、早鐘を打つ鼓動は、逆にスピードを増していく。


バクバクと響く音が耳障りで、他の音が聞こえ辛い。


「……………っ、」


だってもし、違ったら。


冤罪…濡れ衣だったら、


オレだけの問題じゃなくなってしまう。


ただでさえ、桜子さんらのお母さんと険悪なムードになってしまっているのに、ここで志藤家長男にあらぬ疑いをかけた事が知れれば、


それはそのまま、『紗鞠』の信用問題になってしまう。


名乗った瞬間からオレは、『紗鞠』の看板を背負う一人になってしまっているんだから。


迂濶な行動は、あの子との溝を深めるだけ。


「………………。」


でも、


見てみぬふりは出来ない。


もしそんな事したらオレはもう、


貴方の前には、立てなくなる。


そうでしょ?






――黒さん。


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