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懐疑


軽くお辞儀をして去っていく彼を見送り、オレは直ぐ様、桜子さんに向き直る。


驚いた様に瞠られた瞳を覗き込んで、短く要点だけ告げた。


「…桜子さん、此処から動かないで。日下部先輩が、たぶんしずかちゃんを連れてくるから、そしたら、オレが尚久さんを追っていったって伝えて欲しい。」

「!…凛君、まさか」


その言葉だけで、桜子さんは察してくれたようだ。


オレが、尚久さんを、疑っているという事を。


撫子さんの行方を、彼ならば知っているんじゃないかと、

彼が、嘘をついているんじゃないか、と。


強張った表情の桜子さんに、オレは苦笑を浮かべる。


「オレが勘繰りすぎてるだけだと思う。…だから、大事にはしないで。」

「……………、」


そんな上っ面だけ安心させるように笑んでみても、一度芽吹かせてしまった不安の種は、取り除けない。


けれど気丈な彼女は、取り乱さずに、唇を噛み締めていた。


「…………分かった。」



蒼白な顔で、桜子さんが頷いたのを確認して、オレは身を翻し、尚久さんが消えた方向を目指した。


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