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「…はじめまして。主の代理で参りました。日下部京一と申します。」
慇懃な態度を崩さない日下部先輩に、尚久さんは、苦笑しながら、よろしく、と返した。
「僕はこれで失礼しますが、お二人とも、ゆっくりなさってくださいね。」
尚久さんは、オレ達にそう言うと、撫子さんを連れて去っていった。
撫子さんは一度だけ、何か言いたげにしずかちゃんを見たが、力なく俯いて、尚久さんに逆らう事はなかった。
「……………。」
二人が消えた方向を、しずかちゃんはじっと見ている。
撫子さんを気にしているんだろう。
尚久さんが、乱暴な扱いをするとも思えないが、さっきの彼女の様子を見ていると、会ったばかりのオレでさえ心配になるんだから、幼なじみであるしずかちゃんは、尚更だろうな。
「…………ごめん、二人とも。先戻っててもらえる?」
躊躇っていた彼は、振り切るように顔をあげ、オレらにそう言葉をかけると、撫子さんらの後を追うように駆けて行った。
ヒラヒラと手を振って見送りながら、オレは思う。
……泥沼展開にならなきゃいいけど。
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