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「話し中すまないね。…撫子は連れていくよ。母上も、心配している。」

「………。」


さっきまでの愛らしい笑みは消え、撫子さんは、表情を強ばらせたまま、俯いている。


しずかちゃんは、そんな彼女を心配そうに見ていたが、尚久さんは、その視線を遮るかのように彼女の肩を抱いた。


「…心配するのは当然だけど、少しは本人の意志も尊重してあげてくれ。」


しずかちゃんは、じっと尚久さんを見ながら、訴える。


尚久さんは、珍しくものを見たかのように目を瞠ったが、次いで僅かに瞳を眇る。


ほんの些細な表情の変化。
…けれどその不愉快そうな顔に、表面上だけでは分からない、この人の本質のようなものを、垣間見た気がした。


「…アドバイスありがとう。でも、あまり恋人同士の事に口を挟むものでは無いよ。」


爽やかに笑う顔も、口調も、『お兄さん』のようなのに。

けれど、そこにこめた声なき声が、聞こえた。


お前が口を出す事じゃない、と。


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あきゅろす。
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