Main 5 最後は吐き捨てるかのような乱暴な言葉遣いで、しずかちゃんは言うと、立ち上がる。 「…お話はそれだけなら、もう失礼します。」 お父さんの顔も見ず、そう言ったしずかちゃんは、踵を返した。 オレと日下部先輩は、顔を見合せ、お父さんに頭を下げ、出ていくしずかちゃんの後に続く。 「…静!」 その後ろ姿に、お父さんは一方的に話し掛けた。 「後日、弁護士立ち会いの元、発表するつもりだ…先に結婚した者を、後継者とする、と。」 「…っ!!」 しずかちゃんは、バッと振り返る。 「私がお前を指名したとしても、耀子も尚久も、納得はしないだろう。お前は、バックにつく者もいないしな。…だから、」 「だからスンナリとオレが家を継げるように、取り計らって下さったって!?…ふざけんな!!頼んでねぇよ!!!…くだらない争いに、撫子ちゃんと桜子を巻き込むんじゃねぇ!!!」 今度こそしずかちゃんは、激昂した。 オレも、止められない。…否、止める気もない。 「……………。」 肩で息をするしずかちゃんをじっと見つめ、お父さんは、静かに口を開く。 「…最低な事をしている自覚はある。だが止める気はない。」 私には、時間が無いんだ。 そう、お父さんは、もう一度繰り返した。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |