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腕組みをしたオレは、緩く頷いた。
芝生の上に横たわるのは、うちの学園の制服を身に纏った、長身の男だ。仰向けでなくうつ伏せなので、顔は見えないが。
つうか、この通路で人と会ったの初めてかもしれない。倒れているけど。
……いやいやいや。
倒れているんじゃないよ。きっと寝てるんだ。
脳内で呟き、頭を振る。そして納得したように、うんうん、と一人頷くオレをもし第三者が見かけたならば、恐らく頭がおかしいと怯えられた事だろう。
確かに、芝生にうつ伏せで寝る人って、あんまり見ないけれど、個人の趣味にケチつけるべきじゃないだろ、オレ。
そう、寝方なんて千差万別。個人の自由、尊重される権利であるべき、なんて言うか、ぶっちゃけ面倒くさ……ゴホッ、ゲフン!
「…………」
そこまで考えて、オレは息を吐き出した。
……あーあ。どーしよ。マジ面倒臭いんすけど……でも、一応見ちゃったしなぁ。
一応僅かばかりある良心の訴えに負け、オレは恐る恐る、物体X……ではなく、倒れている通行人Aに近寄ってみる。
植え込みを跨いで近づき、傍らに膝をつく。
覗き込んでみたが、起きる様子は無い。
「おーい。大丈夫ですかー?」
口の横に手をあて、呼びかける。
……………………。
数秒待つ。沈黙が流れ、涼やかな風がふんわりと通り抜けるだけ。
返事は無い。ただの屍のようだ。
うん。オレ、やるべき事はやったよね!
会心の笑顔で、滲んでもいない汗を拭う仕草をした。
諦め早いとか、知った事か。
では、さようなら。倒れ伏す村人A。……あれ?通行人だっけ?
まぁそんな事はどうでもいい。オレ、腹減っているんで、昼飯食いたいんだ。
合掌して軽く頭を下げ、オレは、すっくと立ち上がる。
成仏しろよと一瞥した後、教室に戻るべく歩き出した。
……否、しようと、した。
ガシッ。
足を進めようとしたオレの体が、背後にがくんと引っ張られる。
「…………」
……あれ、進めないよ?
何で?
何でって、それはね……。
何でか足を掴まれてるからさぁあ!!
「……!!」
ビビりながらも視線を落とすと、倒れていた人物が、オレの足首をしっかりとつかんでいた。
怖いんですけど!!
明るいうちだからいいけど、夜にやられたらホラー以外の何物でもない。ていうか、ぶっちゃけ、昼にやられても地味に怖い。
貞子かてめえ!!
「……ねぇ」
「!」
昼間に突如起こったジャパニーズホラーめいた出来事に、固まっていたオレに向け、声がかかる。
それは勿論、倒れ伏す村、……じゃなくて物体、でもなく……ああもう面倒臭え!!以後Aさんで!!
とにかくそのAさんが、オレへ声をかけて来た訳だ。
「な……な、何すか?」
なるべく距離を取ろうとするが、足を掴まれている為、上半身が仰け反る形になる。
どもりながらオレが問い返すと、Aさんは、ゆっくりと顔を上げた。
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