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「…母さんは女手一つで、オレらを育ててくれたけど、無理がたたって、オレが中学一年の時に過労死した。…身寄りのなくなったオレと弟は、親戚の家を転々とした。」
大して付き合いも無い、遠い親戚の子供として、何処へ行っても、厄介者扱い。
たらい回しにされながら、それでもオレには弟がいたから…頑張る事が出来た。
―――でも、
「…でも、母さんが亡くなってから一年と少したった頃、………親父が帰ってきた。事業に成功して、大金持ちになって。」
…遅ぇよ。と、
何故か、笑えてきた。
借金は、母が遺してくれた保険金で返し終え、家はとっくに売り払われ、…残されたものなんて、弟だけだった。
「…親父はオレらを引き取ろうとしたけど、絶対に、アイツの元になんか行かない。そう突っぱねた。」
オレから全てを奪ったアイツのところになんて、絶対に。
でも、
「…でも、弟は行ってしまった。………オレらを捨てた、親父のところに。」
その時オレは、全部無くした。
この手には何も無い。
家も、家族も、……役割さえも。
弟を守る。
その一心で、進んできたオレの心は、
そこでポッキリ、折れた。
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