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Side 墨田
※墨田視点です。


「…ちょっと顔、貸してくんないかな?」



そう言って男は、一見人懐こい顔で、ニコリと笑った。



大人しく後に続くと、連れてこられたのは、屋上。


バタン、と扉が閉まると同時に、男は俺を振り返る。


「…《ケルベロス》のテリトリーへようこそ。《陰/陽》幹部、玄武。」


軽い調子で言い放った男は、笑顔の裏でこちらを見定めるように、瞳をすがめた。


「…墨田 司郎って言うんだ?本名。…初めて知ったよ。」


たいして興味なさそうに、男は緩く笑う。


「…用件を言え。志籐 静。」


俺がそう端的に放つと、男は僅かに目を瞠った。



―――男の名は、志藤 静。
夜の街で、幾度も面を突き合わせた、《ケルベロス》の副総長。


かなりの気分屋で、相当ムラがあるが、御門 暁良の右腕を任されているだけあり、腕もたつ上に、頭もきれる実力者だ。


好戦的ではないにしても、笑顔の裏で相手の出方をつぶさに観察し、じっくりと周りを固め、緩やかに逃げ場を断つやり口は、かなり陰湿。
かつ容赦がない。


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