Main not日常。 オレを含め、教室に残っていた面々は、ぎょっと目を剥く。 音の方向へと視線を向けると、前の入り口から、2人、明らかに一目で不良と分かる上級生が入ってきた。 教室の緊張感が、一気に高まる。 物々しい雰囲気にクラス中が固まっている中、不良の1人が大きな声で叫んだ。 「このクラスの石田輝と斎藤凛!前に出ろ!」 「…………。……!?」 ……オレ!? あれ!?斎藤凛て、オレじゃね!? 一拍置いて、漸く理解したオレ(鈍い) ギギ、と油の切れたロボットみたいに周りを見渡すと、面白そうにニヤリと笑う西崎。武藤は眉間にシワを寄せ、怪訝そうな顔をしている。 他のクラスメイトが戸惑いながら、此方をチラチラと窺う中で一人、オレと同様に固まっている奴を見つけた。 唯一、今この状況の中で、オレと分かり合えるであろう彼は、石田輝。 同じように不良さんに呼び出しを食らってしまった運命共同体(大袈裟)だ。 「……とっとと出てこい!!」 オレ達二人が動けずにいると、不良の一人が苛立った声で叫ぶ。 これ以上待たせるのは得策ではないと判断し、オレは元気よく返事をした。 「はい!オレです」 小学生のように手を真っ直ぐあげ、二人組に駆け寄る。 それを見て観念したのか、石田も恐る恐るやってきた。 遅ぇんだよ、と怖い目で凄まれ、オレは誤魔化すようにヘラリと笑う。 後ろの石田がビビってるんで、あんまり威嚇しないで欲しい。 「で、どっちがどっちだ?」 「オレが斎藤で、こっちが石田です」 オレが答えると、不良さんらは、オレと石田をマジマジと眺めた。不躾な視線が、頭の先からつま先まで行き来する。 非常に居心地が悪い。 ……何だ何だ。一体、何を審査されているんだ、オレらは。 「……おい」 じっくりと観察した後、不良さんは、石田のみに声を掛ける。 オレにはもう、興味が失せたらしい。視線の欠片さえ寄越さない。 どゆこと。 「は、はいっ」 石田は掠れた声で返事をする。 ガタイも良いし、髪も染めている彼だが、不良に対する免疫はないらしい。声も肩も小刻みに震えていた。 「お前、ちょっとついてこい」 死刑宣告にも等しい言葉が投げ掛けられ、石田は愕然と目を見開く。 同情の視線を向けながら、ふと、オレは?と思った。思わず己を指差し、疑問顔を向ける。 「お前は行っていいぞ」 すると不良さんは、あっさりと告げ、猫のコを追い払うみたいに、オレに向かって手を振った。 オレ無罪放免ですか?ヤッター。 隣の石田は青い顔を更に青くして、オレを凝視する。 裏切り者!!とおもいっきり顔に書いてあるが……。 すまんな、石田。運命共同体はここに解散だ(早い) とぼとぼと不良さんの後ろをついて行く石田の背を、物悲しいドナドナの曲と共に見送り(脳内で再生)、オレは自分の席へと戻った。 「何だったんだ……」 「あの噂、本当だったんだな」 オレの独り言に被せるように、ポツリと西崎が呟いた。 ……は?? 「何だよ、噂って?」 意味深な呟きを拾い、聞き返すオレを、西崎は面倒臭そうに見た。 ガリガリと乱暴に頭をかき、深いため息をつく。 「……説明すると長くなる。続きは昼休みにするぞ」 一応説明してくれる気はあるらしい。面倒臭がりの西崎にしては大分マシな対応に、オレも素直に頷いた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |