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《 Book 》



「そろそろ行くかのう」

「…はい」


チャイムが鳴ってから、約、十分。

きっと私の頬は赤くなってしまっているけれど。
そろそろ現実に帰らなくてはならない時間。

教室の電気を消して廊下に出ると、途端に少し寂しくなった。


「仁王君」

「何じゃ?」

「…手を、繋いでも良いですか?」

私からは滅多にしないようなお願い。
この顔は益々赤くなってしまったに違いない。

軽くうつ向くと、先程までとは逆に私が頭を撫でられる。

「お安い御用ぜよ」


それから、隣にいる彼は柔らかに微笑んで。
私の手を取り指を絡めた。







授業が終わって、部活も終わったら。
今日は手を繋いで帰ろう。

夕焼けで赤い空の下を。二人で一緒に。


「先生にはどう言い訳しましょうか…」

「教室でキスしてました、って正直に言ったらどうじゃ?」

「…仁王君!!」

「睨んでも無駄じゃ。可愛いだけぜよ」

「もう、知りませんから…」

「ピヨ」


あなたといる時間は、いつだって楽しい。
あなたといるから、いつだって幸せ。


素直な気持ちを噛み締めながら廊下を歩いていると、温かい空気が頬の横を通り抜けた。

もう、夏は近い。







END

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