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《 Book 》

意図は分からないが、とにかく私を騙していた彼。
きちんと叱らねばと思ったのに。
実際は出来なかった。

不機嫌な調子で振り向いた先に、余りにも悲しそうな顔があったから…。


「離れんって、言ったばっかりじゃろ…?」

涼しげな表情は一体どこへやら。不安気な声はまるで子供。
普段からは考えられないような姿を見せる彼を前にして、こみ上げる笑いをなんとか堪える。

「これを、机に置きに行こうと思ったんですよ…」

落ちた物を拾って見せて囁けば、余韻と更に一拍置いて彼が珍しく表情を崩した。

余程恥ずかしかったのだろうか。
顔が真っ赤になっている。


「仁王君」

「いっ、今のは寝惚けてたんじゃ!」

「……」

「う…っ」

溢れ出そうなのは、好きという感情。
今。どうしようもないくらいあなたが好きなのだと再確認させられて。

「授業、さぼっちゃいましょうか」

「……え?」

驚いた顔の仁王君をそのままに、私は言葉を繋げていく。

「五限目だけじゃなくて、六限目もです。…そうですね、今日は部活もお休みしましょう」

「柳生…?」

「それで…。それで、二人きりでどこか遠くへ行くんです。どこへでも、あなたが行きたい所へ」

「……」



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あきゅろす。
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