04 『いらっしゃいませ、クラウス様』 準備を終えて、使用人全員で客人を迎えた。…小さい頃会った、ような気がする。そんな事どうでもいい、疲れた…どうして私が手伝いなんかしなくちゃいけなかったの。 「どうやらこの家にも新顔が増えたようだな…ん?君は…もしかしてマディー主治医の娘か?」 「…ええ」 気安く父様の名前を口にしないでよ。父様を呼んでもいいのは私だけ。ギリリ、と拳に力を入れて怒りを抑圧する。 「おぉ、やっぱりそうか!すっかり大きくなって見違えたな…それにこんな美しく成長して!…まぁマディー主治医が亡くなって大変だっただろう?よく頑張ったな…」 「お気遣い、ありがとうございます」 呼ばないで、呼ばないで…呼ばないでよ!私の、私だけの…私だけの父様なのに!長い爪のせいか、力が強すぎるせいか拳に血が滲み出していた。 「…様、ディール様!」 「…セバ、ス…っな、に…」 「どうされましたか?ぼーっとして…」 クラウス様はもう中庭に行きましたよ、と珍しく本当に不思議そうな顔をして言った。まだ呼吸が整わない、肩が震える。 「本当に…どうされましたか?」 「さぁ、ね…貧血なんじゃないの?」 そう言って目を伏せる。目を伏せると落ち着く、瞼の裏にはいつも私だけを見てくれて、愛してくれた父様が居るから…。 End ← |