03
ゆっくり瞼を開き、意識を覚醒させる。ぼやける視界の中には見慣れない天井と見慣れた黒ずくめの悪魔。微笑を称えて上機嫌そのもの、不愉快だ。
「ご気分はいかがですか?」
「うん、最悪だね。ていうか此処どこ?何で私ワイシャツ一枚なの?」
「私の自室です。服は邪魔かと思いまして」
女性ならば卒倒してしまうであろう極上の笑顔で答える悪魔。それほど私のワイシャツ姿が気に入ったのだろうか。思考を巡らせていると悪魔がギシリとベットを軋ませ侵入し、当然かの如く私を押し倒した。骨張った大きな手は鎖のように私を逃さないようになっていた。…そんな事しなくとも吸血するまでは私は逃げない。
悪魔が近付くと魔物特有のキツく甘い匂いが漂う。この悪魔は特別美しいので眩暈がする程、むせ返りそうな程の強く甘ったるい匂いが鼻腔を刺激する。
「ね、お腹減った。」
朝は寝てた、昼は悪魔があの眼帯少年と出掛けていて出来なかった、夜はあの子に時間食わされてでほぼ一日中お預け状態だった。もう我慢出来ない。
吸血する時に邪魔なネクタイを解いて早く吸わせろ、と行動と視線と言葉で訴える。
「待ちなさい。餌を貰う前に事件について少しは反省したらどうです?」
「…何で?私悪くないと思うけど。あっちがひかかっただけだよ
だって、聖書ではイヴに林檎を食べるように唆した蛇は罪を科されなかったでしょ?それと同じだよ。
さしずめイヴに道連れにされた愚かなアダムはあの子の両親かな」
「結果的には彼女をディールが殺したも同然ですがね」
「つれないね」
いとも簡単に罠にひっかかってしまう人間(イヴ)を弄んではいけない、なんて。こんな面白い玩具、放っておけはしないでしょう。
「まぁなんにせよ、私以外に吸血なんかしたら容赦しませんのでご注意を」
「凄い独占欲だね」
「坊ちゃんの命令だから、と言うのもありますが…貴女が癖になってしまったようです」
クス、と艶やかに笑う悪魔。耳元で響く低く甘い囁きと欲を増幅させる匂いとでどうにかなってしまいそうだ。
「ふぅん。じゃあ…もっと、もっと癖にさせてあげる」
「それはそれは、楽しみですね」
軽く首筋にリップ音を立て宣戦布告。
勝利を手にするのは白か黒か、
End
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