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02


「吸血鬼は銀を嫌うって本当だったんですねぇ」


銀の首輪を彼女に付けると、たちまちグタリと力が抜けて銀に触れている皮膚が赤くなってきた。こちらを睨む目は黄金色から月色に変化してした。


「ゲホッ…は、やく取ってよ…」


「では約束して下さい。二度と無差別に女性を吸血しない、吸いたい時は私に言う。約束できますか?」


「嫌だ、よ…っ君男じゃないか…私は美しい女しか吸いたくない!」


この吸血鬼は…何処まで女の血が好きなのだろうか。抵抗する彼女の赤いマニキュアに彩られた指が頬の皮膚に食い込み引き裂かれた。


「はぁ…、では私の血を吸ってみてから文句言って下さい。悪魔の血は吸った事がないでしょう?」


「んぐ…っ、わかった飲んであげるから、…引っ張らないで」


強引に彼女を銀の首輪で引き寄せ、彼女は苦しそうな息遣いで私のシャツを剥ぎ取る。私が言うのも難ですが、少々強引過ぎるのでは…?


「…ちょっと、もう少し落ち着いて下さい。シャツのボタンが貴女のせいで引きちぎれました。」


「煩いな…君が吸って欲しいって言ったんじゃないか」


満ちた月光で彼女の長い睫毛が銀色に光る。既に首筋に舌を這わせる事に夢中で視線は合わない。男の血は嫌いと言っておきながら…。しかしその姿は息を飲む程に美しい、まるで灰白色の美しい蛇が這っているかのように。


「ん…、じゃあそろそろ頂くよ」


「どうぞ…ッ!…凄い、ですね…」


一瞬の痛みの後の、甘く激しい快楽はまるで麻薬のようにじわじわ身体中に広がる。快楽の波には誰も逆らえない。悪魔も例外なく。
名残惜しそうに唇に付いた血液まで綺麗に舐めとる彼女は先程とは打って変わって満足そうに笑った。


「癖になりそうでしょう?…にしても…うん、気に入った。暫くは君で我慢してあげるよ」


「…ハァ、っ随分とお気に召したようで」


うん、とゆらゆらと尻尾を揺らしていそうなくらい機嫌良く答える彼女。なんて現金なんだろうか。若干呆れながらも私もあの快楽を到底手放せそうもない。


「…ね、名前何だっけ?美味しかったから特別に覚えてあげる。私はディールでいいよ」


「一々偉そうですね…まぁいいです、私の名はセバスチャン・ミカエリス。以後お見知りおきを」


「私の方が地位が高いんだから当たり前だよ。…セバスチャン、か…じゃあセバス。これから宜しくね?」


我が強く残虐で、素直過ぎる蝙蝠を飼い始めると思うと、気が遠くなる。が、何故だか胸が躍り、彼女を繋ぐ首輪をもう一度引っ張った。



あきゅろす。
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