image花葬
雫
「馬鹿なやつだな。 行くぞ」
「こいつはどうしますか?」
「放っておけば死ぬでしょ」
「そうだな」
貴族達は下品に嘲笑い、去っていった。
しかしカイはその事さえ気付かない。
ただただ一点だけを見詰めている。
その顔色は真っ青だ。
カイの涙が乾いた頃、カイはやっと足を動かした。
倒れている彼へ、ふらつきながらも、ゆっくりと近づく。
ぺちゃ……
彼の血を踏んだのか、微かな音がした。
ゆっくりと座り込み彼の顔を見詰める。
瞳は開けたままだった。
最後に映したのはカイの姿。
「ねぇ……。 ねぇ……。
ねぇってば……。」
カイから放たれる声はか細く、精気を感じられない。
恐る恐る、震える手で彼の顔を触れる。
それはとても冷たかった。
ゆっくりと彼を胸に抱き上げる。
「ごめんね……。 ごめんね……ルキラ。」
カイの目から沢山の雫がこぼれ落ちた。
どのくらい経ったのだろうか。
カイは彼――ルキラの顔へ視線を向けた。
するとルキラの目から一筋の雫が流れた跡があった。
その雫は赤。
[*前へ]
無料HPエムペ!