image花葬
赤
「おいおい! なーに見詰め合ってんのかな?」
「お前らホモか?」
酒にやられたのであろう、掠れた声で貴族達は下品に笑い出す。
その時だった。
彼はカイの手を離した。
左端にいる貴族達の方へと走る彼。
そのまま勢いよく飛び掛かり、二、三人の貴族と一緒に倒れ込む。
瞬時にカイの方へ振り向き、すべての力を出しきるかのように腹から声を出し、叫んだ。
「逃げろー!!!」
カイは微動だにしない。いや、出来ないのだ。
「逃げろー! 早く!!
逃げろー!!!」
再び叫ぶ彼に貴族達が襲い掛かる。
「い……いや」
恐怖と混乱で震える声で小さく呟く。
「カイー! 逃げろー!
逃げろよー!!」
カイは頬を流れる涙にも気付かないほど動転し、うわ言のように呟く。
「いやだ……いや……いや」
「早くー! 走れー!!!」
彼は両腕を捕まれカイと向き合う形で立たされる。
尚も必死に叫ぶ。
「カイー!」
その時、鼓膜を突き抜け身体中に響き渡るような銃声。
四方八方に飛び散る赤。
花びらのように舞う赤。
月明かりに照らされた赤。
すべては彼から放たれた血、肉の欠片。
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