image花葬
全速
月明かりが照らす中、必死に走る二人の少年。
「カイ急げ!! 捕まったら終わりだぞ!」
「ハァハァ……わかっ……てる」
カイは彼に引き摺られるように手を引かれ、全速力で走る。
息は上がりきっていて、十分に酸素が行き届かないのだろう。
何人もの人々が四方から押さえ付けているかのように身体中が重い。
「ハァハァ……も……う無……理……」
カイは力を振り絞って訴えた。
「あそこまでだ!
ハァ……がんばれ!!」
彼はすぐ近くの路地裏を指さし、懸命に走る。
「ハァハァハァ……げほっ……ハァ……うっ」
路地裏に着いた二人。
カイは倒れ込み、必死に酸素を吸い込む。
「ハァハァ……大丈夫か……カイ」
方膝をつき、カイの背中を擦りながら彼も息を整える。
「げほっ……ハァハァがは……だ……いじょう……ぶ」
「息を整えたら……ハァ……すぐ行くぞ」
ここは西暦×××年ヨーロッパ。
貧富の差が激しい時代。
貴族と農民の二つに分かれている。
彼らは農民。
街で酔っ払った貴族らとぶつかってしまい、追われているのだ。
「カイ。 ハァ……立てるか?
……ここじゃすぐ見つかる」
「うん……」
「ほら」
そう言って彼は手を差し出す。
カイは彼の手を握ると言った。
「ありがとう……」
「行くぞ!!」
そう言うと彼はカイの手を引き走り出した。
「!!!」
彼らは急に足を止めた。その表情は驚きと混乱に染められている。
「逃げられると思ってんのか?」
そこには怒り狂い顔を赤くする者、追い詰めたことにより満足感を得、ニヤニヤと嘲笑う者。
様々な貴族達が立ちはだかっていた。
「大丈夫だ、カイ」
そう言った彼の喉は乾ききっており、小さな声を絞り出すのが精一杯である。
「う……うん」
強く握りあう二人の手は所々白くなっている。
溢れ出す冷や汗は地面へと滴り落ち、震える体は止めることが出来ない。
真っ直ぐ前を向き、彼は言う。
「カイ……愛してるぜお前のこと」
「え……? ぼ、僕だって」
「知ってる……」
彼はふっと優しく微笑みカイを見つめる。
不安と恐怖の滲む瞳でカイも彼を見つめ返す。
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