「ハァ、ハァ、静蘭相変わらずいい匂い」
「……離れて下さい、痴じ、真奈様」
静蘭に飛び付き、その芳しい香りを堪能する。
貧乏貴族だ。香なんて買う余裕はないはずなのに、香りたつ甘やかで上品な香りに今日もくらくらと酔う。
顔よし、匂いよし、体よし。
性格に難有りだが、そんなものは愛の力でカバーだ、カバー!うふふふ。
静蘭への愛、無限大!
「良し、ちょうど姉様も父様もいないし。少し早いけど寝台に、ぐへっ」
にやにやと笑み崩れながら、私の室にエスコートしようとすれば、頭に大きな衝撃。
ひどい!父様には殴られたことないのに!
「はしたないですよ、この痴女が」
「ああん、いい!すごく良い!すごく良いよ!その蔑んだ目!」
素敵!いっつくーる!なんて体を捩らせれば、ひくりと静蘭の完璧な笑顔が歪んだ。
やだもうぞくぞくしちゃう!
「でもね静蘭、私は受けっていうより、どちらかと言うと攻m「微塵も興味ありません。黙って下さいこの痴女が」」
「え?黙らないとチューでその唇塞いじゃうぞ的な!?キャッ真奈どっきどき!」
「永遠に喋れないようにして差し上げましょうか…?」
「いやーん!そんな、永遠に口付けてたいなんて!」
「一度死んできて下さい」
虫けらを見るような瞳で私を見下ろす静蘭。
それに「静蘭と一緒なら」と顔を赤らめながら答えれば、プチンと静蘭の理性が切れる音。
「……真奈様!」
「アハハハハーっ」
声を荒げた静蘭からヒラリと逃げ出し、庭へと出る。
追いかけてくる静蘭に、ここが海辺だったらなあ。なんて思いながら門をくぐった。
「真奈!どうしたの?」
「あ、姉様お帰りー」
ちょうど賃仕事から帰ってきたらしい姉様に、一度止まって挨拶。
それにつられて、ただいま、と返した姉様を横目にまた走り出した。
もう、静蘭が追いかけて来ないことは、わかってた。
それでも、足は止めなかった。
いつだって、彼の一番は、
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