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ひとつめ



「ハァ、ハァ、静蘭相変わらずいい匂い」

「……離れて下さい、痴じ、真奈様」



静蘭に飛び付き、その芳しい香りを堪能する。
貧乏貴族だ。香なんて買う余裕はないはずなのに、香りたつ甘やかで上品な香りに今日もくらくらと酔う。

顔よし、匂いよし、体よし。
性格に難有りだが、そんなものは愛の力でカバーだ、カバー!うふふふ。
静蘭への愛、無限大!



「良し、ちょうど姉様も父様もいないし。少し早いけど寝台に、ぐへっ」



にやにやと笑み崩れながら、私の室にエスコートしようとすれば、頭に大きな衝撃。

ひどい!父様には殴られたことないのに!



「はしたないですよ、この痴女が」

「ああん、いい!すごく良い!すごく良いよ!その蔑んだ目!」



素敵!いっつくーる!なんて体を捩らせれば、ひくりと静蘭の完璧な笑顔が歪んだ。
やだもうぞくぞくしちゃう!



「でもね静蘭、私は受けっていうより、どちらかと言うと攻m「微塵も興味ありません。黙って下さいこの痴女が」」

「え?黙らないとチューでその唇塞いじゃうぞ的な!?キャッ真奈どっきどき!」

「永遠に喋れないようにして差し上げましょうか…?」

「いやーん!そんな、永遠に口付けてたいなんて!」

「一度死んできて下さい」



虫けらを見るような瞳で私を見下ろす静蘭。
それに「静蘭と一緒なら」と顔を赤らめながら答えれば、プチンと静蘭の理性が切れる音。



「……真奈様!」

「アハハハハーっ」



声を荒げた静蘭からヒラリと逃げ出し、庭へと出る。
追いかけてくる静蘭に、ここが海辺だったらなあ。なんて思いながら門をくぐった。



「真奈!どうしたの?」

「あ、姉様お帰りー」



ちょうど賃仕事から帰ってきたらしい姉様に、一度止まって挨拶。
それにつられて、ただいま、と返した姉様を横目にまた走り出した。



もう、静蘭が追いかけて来ないことは、わかってた。

それでも、足は止めなかった。












いつだって、彼の一番は、


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