チェリー。[オズ鴉]
※オチがグロいかもしれないので注意。微エロです。たぶん。





いくら自分のほうが一つ年上なのだと言い張っても、やはり十年もの月日を一瞬で飛び越えてしまった自分と、同じ月日をじっくりしっかり生きてきた彼とでは、その見た目通りの年の差があるのだと感じざるを得ないことがある。
たとえばそれは料理をするときの手付きだったり、何だか小難しい政治やら何やらの新聞記事に目を通している時だったり‥‥‥‥‥夜の営みだったりする。

以前は愛くるしく可愛らしいだけであった彼が、暗闇から這い出てみると美しく成長しとてつもない色気を発していた。
触りたい、めちゃくちゃに触りたい、めちゃくちゃにぐちゃぐちゃにしてやりたい、いけないことをしたい。
身体の底からそんな感情が湧き出て止まらなかった。

ある夜、遂には実行に移し、彼を組み敷き思い思いに身体を弄り舌を這わせ愛撫した。

しかし、だ。

十五歳の少年の頭で考え得るだけの前戯を済ますと、そこからどうしたらよいものか、わからなくなってしまった。
この行為は、どこに向かえばよいのだろうか。終着点はどこだ。

「‥‥‥‥オズ?」

彼と自分の、熱く硬くなったモノを握り締めた。

これだ。
この熱を解き放つのが、終着点だ。
二人でそこに向かって高めていけばいいのだ。
どうやって?
このまま扱けばよいのか?
それじゃあ何だか物足りない。
そもそもこれは本来男女でするものだ、本来子供を授かるための行為だ。
ただこの熱を解き放ったって、子供なんかできやしないじゃないか。

「ねえ、ギル。」

「‥‥‥なんだ?」

「このあとって、どうしたらいいの?」

「どうって‥‥‥‥‥」

問えば、彼は一瞬驚いて、困った顔をして赤くなったり青くなったり挙動不審に視線を泳がせた挙げ句に、

「‥‥‥そ、そのまま終わりでいいんじゃないか?」

そうしていつも、お互いの性器を擦り合わせたり扱くだけで終わってしまうのだった。





この頃は毎晩のように、記録の上では年上なのに実際には年下になってしまった主に身体を求められる。

求めては来るものの、そこはやはりまだ子供なのだ。男女の行為ならいざ知らず、同性同士での行為の仕方など知らないのだろう。
いや、男女の行為の仕方でさえ、お坊ちゃまな主は低俗なものとして知る機会がなかったかも知れない。少なくとも、当時彼に仕えていた自分にはそういった知識がなかったように思う。
自分が知らなかったからといって主もそうであるとは言い難いが、あの様子だと本当に知らないのだろう。

自分はもう、いい大人だ。

わからないはずもなく、あの夜、主の行為を受け入れたときに覚悟はしていたつもりだった。
主にはどんなことをされたって構わない。どんなことでも受け入れる。そう思っていたし、そう思っている。

そう思ってはいるのだが。

改めてどうするのかと訊かれたら、自分は怖じ気付いてしまったのだろうか。主が望むなら何だってしてあげるし、受け入れる気でいたのに、男としてのプライドなのだろうか。ここにそれを入れればいいんだぞ、なんて、とてもじゃないが言えなかった。
かといって自分のモノを主になんて全く想像できないし、児童虐待のような気がしてならないし、絶対痛いし痛い思いなんかさせられないしそんなことして嫌われたらと思うと、どう考えても自分が受け入れるしかないのだ。

そうはいっても。
そんなこと、自分から申し出るのは‥‥‥ああ、やはりこれは男としてのプライドなのだろうか。





彼は知っているのだろう。
夜の営みがどういったものなのか。
この欲を、熱を、ただ吐き出すだけじゃない、昇華する術を。

当たり前だ。
だって彼は大人なのだから。

快楽を求めて昇りつめれば先から精子が出てくる。精子は卵子とくっついて、受精卵になって子宮の中で細胞分裂して赤ん坊になる。
そうするための男女間の行為の疑似行為というか、おそらくはそれに相当することをすればいいのだ。

卵子も子宮も女の腹の中だ。
ということは、彼の腹の中に欲をぶちまければいいのか。

どうやって?
どうして彼は教えてくれないのだろう。

「‥‥‥言えないようなこと、なのかな。」





しばらく思案して、少年はナイフを片手に彼に微笑んだのだった。





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あとがき、

ほのぼのしたオズの童貞卒業話、のつもりで書き始めたのに、いったいこれはどうしたことだろう。
途中で行為の終着点よりも話の終着点が見えなくなって、面倒臭くなって無理矢理終わらせてしまった。
本当はオズがギルの部屋漁ってあるかどうかもわからないエロ本探したり、そういうことをしたかったはずなのに。
不快にさせてしまったらごめんなさい。
マジですみませんでした!!!!!


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