七夕 [アレ神]
「‥‥今年も雨、だな。」
イノセンスを探しにやってきたとある町の宿泊施設。
アレンがベッドに寝そべりティムキャンピーと戯れていると、じっと窓の外を眺めていた神田が、ぽつり、と呟いた。
「まあ、梅雨ですから、ね。"今年も"も何も、梅雨は毎年来ますよ。」
神田の独り言のような言葉に、アレンは答えながら体を起こした。
アレンからの返答に、神田はちらと振り返り、そして少し不満気に言う。
「そうじゃねえよ。」
「 ? じゃあ、何なんですか。」
聞き返せば、神田は寂しげに俯いて少し黙ってから言うのだった。
「‥‥あいつら、今年も会えないんだなって。」
「‥‥‥‥‥‥は?」
アレンは、何の話なのだろう、と首を傾げた。
今年も会えない? 誰と誰が?
ていうか、神田が他人のことで何をそんなに‥‥。
神田は、アレンのそんな様子に少し苛つき気味だった。
「だから、今年も織り姫と彦星は会えないって話だよ。」
年に一度だけ会うことが許されて。
それなのに毎年のようにその日には雨が降っている。
雨が降ったら、二人の間に流れてる天の川は水位を増して、溢れそうな濁流になる。
すると、二人のために橋を架けに来た白鳥は、うまく橋にはなれなくて。
そして二人は会えず終いなのだ。
この世で唯一、たった一人。
どうしても会いたい人に、会えるはずだったのに。
会いたい、"あの人"に。
「‥‥‥ああ、スターフェスティバルですか。神田、メルヘンですね。」
神田の思いとは裏腹に、アレンは神田の発言に笑いを堪えていた。
「っ、何がおかしいんだ!」
笑われている、ということに恥ずかしさと憤りを感じ、神田は顔を赤くした。
するとアレンは、どうどう、というように神田を宥めるように言う。
「大丈夫ですよ、織り姫と彦星は毎年会えてます。」
「は? でも、」
「雲の上のずっと向こうのお話ですからね。雲の上はいつもピーカンなんですよ。神田、知らないんですか?」
「あ? あ、そっか、いや、知ってた!」
考えてみれば簡単なことだ。
言われて初めて気が付いた神田は、また顔を赤に染めて、ぷい、と外方を向いた。
その仕草が、アレンにとってはとても愛らしく思えて、ニヤけてしまう。
アレンは外方を向いてしまった神田の顔に手を伸ばし、顎に添えるとこちらを向かせる。
「ね、織り姫さん。」
「は‥‥?」
ちゅ。
「はぁ!?」
さっきだって随分と赤味を帯びていた顔を、さらに、みるみる赤く染めていく。
まるで熟れた林檎のようだ、とアレンは思った。
くすり、と笑って耳元で囁く。
「おいしそうな織り姫さん。」
「な、なにっ‥‥死ね!」
がつんっ
「え‥‥。」
アレンの行動に戸惑った神田は、腰に差していた六幻の柄の部分でアレンの頭をど突いた。
甘い雰囲気を作りたかったアレンは神田の態度に少し打ちひしがれたが、気を取り直して提案する。
「あの、そんなに心配なら、短冊に二人がちゃんと会えますようにって、書きませんか?」
丁度、神田の後ろに笹が飾ってあることですし。
痛みを堪えて精一杯の微笑みで。
「はっ、馬鹿か、お前。」
「‥‥はい?」
しかし鼻で笑われ、頬の筋肉が引き吊る。
「短冊に書いたくらいで願い事が叶うわけねえだろ。」
「え。あ、ちょっと神田、」
ふん、というふうに突っ撥ねて、足早に部屋を出ていってしまった。
「‥‥‥何なんだ、自分は織り姫だの彦星だの言っておいて。」
ふう、とため息を吐き、先程まで神田の立っていた場所に目をやる。
「あ。」
彼が立っていて、隠れて見えなかった笹にはひらひらと揺れる長方形の橙色と、丸い頭の白がぶら下がっていた。
「これって‥‥‥短冊と、照々坊主?」
―ちゃんと会えますように。 神田 ユウ―
「ぶっ!」
弛んでくる口許を押さえながら橙色の紙を確認して、押さえ切れずにとうとう笑い出してしまった。
「あっはっは! あー、おっかしーの。」
神田が作ったであろう照々坊主の頭を人指し指で小突く。
「かわいーことするなぁ‥‥。」
少しして、神田が部屋に戻ると、笹には新たに藍色の長方形が揺れていた。
―かわいい僕の織り姫の願い事が、ちゃんと叶いますように。 アレン・ウォーカー―
++++++++++
あとがき。
文章散らかっとる‥‥!
そして七夕に20分ほど間に合いませんでした。
「ね、織り姫さん。」の件、意味が分かりません。
もう、色々言いたいこと、言い訳したいこと、大量にあるけどもういいや。
とりあえず、うちの神田は乙男だ。ぇ
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