気付かないフリをする 「なぁ静雄。神様って信じるか?」 「…はい?」 「いやな、さっき街角の宗教勧誘見ておもったんでな」 あまりに唐突な上司の言葉に、敬愛する上司が変な宗教にでも入ったのかと思った静雄だったが、どうやら杞憂だったようだ。 煙草を一息吸い、紫煙と共に言葉を吐き出す。 「俺は神様なんて信じてませんよ」 もしいるのなら何故、自分にこんな傷付けるしか出来ない力を与えたのか。 自分の怪力に苦悩し、神を恨み、そして否定した。 それでも、もしいるのならば―― 「もしいるなら、その神様とやらを一発ぶん殴ってやりますよ」 その言葉に上司はそうかと短く返事をしただけだった。 ふと静雄の脳裏を過る無神論者の情報屋。 アイツだったら俺の事を一頻り馬鹿にした後、神の存在を否定するのだろう。 そんな事を考えた自分に自嘲の笑みが浮かんだ。 俺は今日も気付かないフリをする 本当は自分の気持ちなんてわかっている。 ただ認めたくないだけだ。 ------ 過去拍手文。gdgd。 →臨也 [#Next] |