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背中を足で、ツン。

梅雨入り。
そんな言葉が、メディアで聞こえた筈なのに…何故か、晴天で夏日な本日。
まぁ、ありがちな事ではある。

その暑さの為に、早くも活躍する事となった扇風機。
のんびりと扇風機は右へ左へと動く。その動きと共に、名前も右へ左へと動いて行く。

『ふぁぁぁ〜』

扇風機からの心地よい風。

『あ〜つ〜い〜ぃぃねぇぇぇ〜ぇ』

風を堪能しながら、扇風機に向かって声を出すと、自分の声が変に聞こえるのを楽しんでいる。

『あははは。おもしろぉ〜』

扇風機に顔を更に近づけて楽しむ名前。

「ねぇ」

その動きを少し離れた所で、本を読んでいた雲雀が、扇風機にへばりつく名前に視線を移し声を掛けた。

『きょうやくん!あんね、すごぉ〜おもしろいよぉ〜こえがね、へんなのおぉぉ〜』

楽しそうな声ではしゃぐ名前に、溜め息を付く。

「名前がそこにいると、僕の方に風が全く来ないんだけど」

『ほえ?』

「嫌がらせ?」

ただ扇風機が楽しかっただけで、風を独り占めしていたのに気付かなかった名前は、目をパチクリとさせて雲雀を見つめる。

『と…きょうやくん、おかぜなかった?』

「なかったよ」

『と…ね、ごめん…ね?』

ワザとでは無かったとは言え、雲雀に悪い事をしたとシュンと小さくなる。
雲雀は、本に意識が向いている為か、そんな名前を気にする風もなく、静かに読んでいる本に再び視線を戻す。
名前は、扇風機の前から退き、雲雀に近づくと、その横でコロリと転がる。
この場所からも、障害物がなければ風は十分に当たり心地よい。
雲雀の横で、イジケモードの名前は、転がりながら雲雀の顔をチラチラと見上げて様子を窺う。
本を読んでいる雲雀は、怒っている訳ではないのは分かるのだが…イジケモードの名前はなんとも面白くない。
う〜っと、唸りながら雲雀の周りをコロコロと転がる。
そんな名前に、チラリと視線を落とす雲雀。
雲雀が反応したのが分かり、えへっと笑って雲雀の方へ転がりながら近づくと、雲雀は名前の頭を撫でて、また視線を本に戻して読み出してしまう。

『……う』

また、本に視線を戻してしまった雲雀につまらないと口を尖らせる名前。
でも、騒いで雲雀に怒られたくはない。

『……』

「……」

扇風機の動く音だけが部屋にゆっくりと響いている。


雲雀は読書が一区切り付くと、パタリと本を閉じて側で転がる名前に再び視線を移す。
名前の方は、まるでご主人様に待てを言われた犬の様に少し離れた所で転がりつつ頑張って大人しくしていた。

名前は、雲雀の視線を感じると、名前は、表情を明るくさせ、雲雀の方へコロリと転がりながら近づき、雲雀の背中を足で、ツン。と、突っつながら“遊んでくれる?”と言いたげな甘えた顔で小首を傾げる。
その名前の仕草に、口元を少し綻ばせながら、名前においでと雲雀が、手をのばせばそれを合図に、ピョコリと跳ねて立ち上がり、大好きな雲雀の膝の上にポフリと座りご満悦。

暑い日でも、雲雀とくっ付きたい名前。
暑いのだが名前を離したくない雲雀。

そんな二人は、扇風機に少し近づき、スイッチを“弱”からそれよりも一段階上げる。
甘く触れ合う二人に涼しい風を懸命に送る扇風機。

名前は扇風機が左右に動いて、自分の顔の近くになる度に『あ〜〜〜』と声を出して楽しそうにはしゃいぐ。
今度は、雲雀と一緒だから風は独り占めじやないと、ご機嫌な名前に、クスリと笑って名前に触れる雲雀。

扇風機だけの事なのに、二人にはその事だけでも楽しく感じてしまう。
そんな梅雨の合間のたわいない一コマ。

のんびりとした二人のある1日。


2010/6/18





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あきゅろす。
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