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valentine1*美味しいエッセンス★@

恋する乙女の、イベント。
2月14日。
バレンタインデー。

チョコレートに、いっぱいの愛を詰めて、大好きなあの人に…。

チョコの甘さは、乙女の愛でより一層増すのです。



*********

「京子ちゃん。今年は、どうしましょうか?」

「そうだね〜どうしよう」

ん〜。
ハルと京子は、あと2日でやって来るバレンタインデーのチョコを、どうしようかと思案中。
二人のお気に入りのケーキ屋の喫茶スペースで、これまたお気に入りのケーキセットを食べながら。

毎年、ツナ達に手作りのチョコを送っている訳なのだが、さて今年は…何を送ろうか。
去年は確か…生チョコだったと思い起こす。
そんな悩む二人と違って、ハルの隣の席でちょこんと座り、苺のケーキを美味しそうに食べる名前。
フォークで、ケーキの上に乗っている苺をプスリと刺して、パクリと口へと運ぶと、美味しくてたまらないという顔で、ニマニマする。

『ハルちゃん!けぇきぃおいしいねぇ〜、いちごだいすきぃ』

そんな無邪気な名前に、思わずクスリと笑う。
「良かったです。このお店のケーキは、みんな美味しいですから。あ、ハルのチョコケーキも食べてみますか?」

ハルは、自分のフォークでチョコケーキを食べやすい大きさに取ると、隣の名前の口元へと差し出だすと、名前は、それをパクリと口にする。
モグモグと噛み締めれば、口一杯に広がるチョコの味。

『おいしぃぃ』

「名前ちゃん。私のモンブランも美味しいから食べてみる?」

京子も、ハルと同じように名前へと、自分のケーキをフォークに取り名前へと差し出した。
嬉しそうにそれも頬張れば、チョコとはまた違う栗のクリームが美味しくて、ニンマリ幸せ顔になる。

『おいしぃぃ』

噛み締めて、両方のケーキを味わい終えると、今度は自分もと言う名前。

『……わたしのけぇきぃも、ハルちゃんときょこちゃんにあげんの』

「大丈夫ですよ。イチゴのケーキは、名前ちゃんが食べてください」

ハルが言えば、京子もそうだよと頷き返す。
しかし、二人の言葉に納得しない名前は、頬を膨らませながらイヤイヤと不満そうに首を大きく振る。

『だめなの。おなしがいいのぉ』

名前は、自分のケーキを二人と同じ様に取って、先ずはハルへと差し出した。

「ん〜と……。じゃあ、頂きますねっ」

『うん』

フォークに乗ったホイップクリームのたっぷり乗ったケーキをパクリと食べるハル。
それをじっと見つめる名前。

「ん〜やっぱり、ここの苺のケーキは、クリーム鉄板です。おいひぃ〜っ」

両手を頬に添えながら、幸せそうに味わうハルの姿に、嬉しそうにする名前。

「名前ちゃん。ご馳走様です」

『うん』

続いて、京子にもとケーキを取ると、フォークを差し出す。

「じゃぁ頂きます」

京子はフワリと笑って、名前の差し出すケーキをパクリと口にし、じっくりと味わう。

『おいしい?』

「うん。美味しいよ。いつもの苺ケーキよりもっと美味しいかなっ」

『ほんと?』

そう告げる京子に、ハルも大きく頷いて、賛同する。

「名前ちゃんから頂いたから、もっと美味しく思えるんです」

その意見に、京子も笑いながら「そうだよね」と、頷いた。

『ほえ?』

なんで?と、キョトンとする名前に、クスクスと楽しそうに笑う二人。
京子が名前に教えてくれる。

「あのね。仲良しの友達と、美味しいものを一緒にたべるとそれがもっと美味しくなるんだよ」

『ほんとに?』

「もちろんです。仲良しは、美味しくするエッセンスなんですよ」

ハルも京子の言葉に続けてにっこり笑うと、もう一度自分のチョコケーキを名前へと差し出した。
目の前に出されたチョコケーキと、ハルの顔を交互に見詰め、その後パクリと口にする。

モグモグ…。

「ねっ。さっきよりもっと美味しくなりませんか?」

コクンとケーキを飲み込むと、目をパチパチさせる。

『ふぉぉ!さっきのよりおいしいぃ』

興奮する名前に、「ほらね」と笑う。

「そうだ。ハルちゃん今年は、クッキーにしない?」

「はひ?クッキーですか?」

「うん」

名前に向いていた顔を京子に向けると、京子は、名案だと言うような顔で頷く。

「チョコクッキーとか、いろんなクッキーを作ろうよ。それなら、名前ちゃんも一緒に出来ると思うんだ」

京子の提案に、なる程と納得する。

「名案です。名前ちゃんも、バレンタイン参加しましょう」

『ほえ?ばれんたいん?』

何だろと小首を傾げる名前。

「2月14日はバレンタインでね、その日は好きな人にチョコをあげる日なんだよ」

『すき?』

「そうです!名前ちゃんも、大好きな人にプレゼントしましょっ」

『……だいすき…』

ぽそりと呟く名前の頭の中に、大好きな人の顔が浮かんでくる。
いつも一緒にいて、嬉しい人。
いつも一緒に居たい人。

「決まりです!よ〜し!!皆で頑張って作りましょう」

ガッツポーズをして意気込むハルに、『お〜っ』名前の元気な雄叫びが、お店の中にこだました。


*************

「台所…ですか?」

突然訪れたハルと京子に、台所を貸して欲しいと言われた草壁。
貸す事に、特に問題がある訳ではないのだが、その理由が分からず不思議そうな表情を向けてる。

「やっぱり…駄目でしょうか?」

遠慮がちに言いながらも少し強引に草壁に言い寄る二人に、なんと返していいものやらと困惑する。

「いえ、問題は無いと思いますが…一応雲雀の許可がないと…」

「あ…ですよね…」

草壁の回答に、もっともだとシュンとしながら返すハル。

「申し訳ありません。ですが、何故ここの台所を?」

「……」

バレンタインにチョコクッキーを作ろうと決めた二人だったが、どこでそれを作ろうと言う話になった。

「どうしましょうか…」

「ツナくんの所だとみんなに分かっちゃうよね」

「ですよね…」

「「……」」

どこか良い場所はないものかと考えた末の二人の結論。
訪れたのは、雲雀の所であった。

「明日だけでいいんですけど…やっぱり…雲雀さんが居ないのに勝手に決めるなんて…無理ですよね…」

「ねぇ。そこで何してるの?邪魔だよ」

シュンとしているハルと京子の背後から、入り口を二人に塞がれて不機嫌そうな声の雲雀が現れた。
用事を終え、丁度戻って来た所。
「恭さん」

『あ、きょうやくん。おかえりなさーい』

雲雀の登場に少し驚く草壁。
そして、ハルの側にくっ付いていた名前が、雲雀が帰って来たのを嬉しそうにしながら、トコトコと雲雀の側へと走り寄る。
雲雀は名前を抱きかかえ、「ただいま」と名前に優しい声を掛けながら、名前の顔にそっと触れる。

「哲。ここで何しているの?」

ジロリと睨まれ焦る草壁に、ハルが慌てて声を出す。

「あ、あの、すみません。草壁さんは悪くないんです。わ、私たちが勝手に、その…お願いを…して…」

名前に会いにちょくちょく訪れるハルだが、雲雀にと話すのはどうも馴れずに、何時も思わず緊張してしまう。

「ふ〜ん。で、用件って何?」

そんな焦るハルを特に気にする風もなく、坦々と要件のみを聞く雲雀に、名前が元気に発言する。

『あんね、ハルちゃんとぉ、きょこちゃんとぉいっしょに、くっきぃつくんの』

「クッキー?」

『うん。つくっていい?』

何故自分の所でそれを作りたいのか理由が分からないが、雲雀の腕の中で嬉しそうに可愛い顔で名前に問われれば、雲雀にそれを拒絶する理由も見つからない。

「別にいいよ」

あっけない雲雀の承諾。
難問を難なく名前によってクリアーし、良かったと喜ぶハルと京子。

「で、今なの?」

視線を、名前からハル達に移せば、先程まで名前に向けていた優しい顔と違い、無表情な顔に、少しだけ眉間にシワを寄せ問い掛ける。

「あ、いえ、明日…。キッチンを使わせて頂きたいんです」

「ふーん。べつに構わないよ。詳しい事は、哲に言いなよ。哲、後は頼むよ」

「へい」

草壁に、用件の続きを託すと、もう興味が無いと言った態度で、雲雀は名前を抱えたまま中へさっさと入ってしまう。
名前は雲雀に抱えられながら、『はるちゃん、きょこちゃん。またね〜』元気に手を振りながら、雲雀の腕の中でジタバタと別れの挨拶を送る。
そんな、名前と雲雀のアンバランスな姿を二人は面白そうに見ながら、名前に「またね」と手を振り返えす。


「では、お二人とも明日また。午後でいいですか?」

「はい、十分です。ありがとうございます」

「すみません。無理言ってしまって…」

「いえ、私は、別になにもしていませんから。言うなら名前さんの威力です」

そう草壁が答えれば、思わず納得してしまう二人。


本当に雲雀は、名前にだけは甘い。


2010/2/12



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