Xmas*メリークリスマス2
「はぁぁぁ〜」
台所に、ハルの巨大な溜め息が木霊する。
そんなハルを、心配そうに様子を伺う京子。
「ハルちゃん。どうしたの?大きいため息付いて…元気ないね」
声を掛ければ、眉尻を下げて情けない表情をしながら、思わず京子に抱きつく。
「ハ、ハ、ハルちゃん!?どうしたの」
そんなハルの行動に、京子は驚いて目を丸くする。
「ぎょうごぢゃーん。聞いてください。ハルは、ハルは、名前ちゃんに申し訳ない事をしてしまったんですぅ!もう、ハル、名前ちゃんに足を向けて眠れませんし!合わせる顔は、更に、既に、ありませんんん〜っ」
怒濤の様に息を付く間もなく話し続けるハルに、少しだけ慌てながらも、どこかのんびりした調子で、抱きつくハルの背中をポンポンと優しく叩く。
「ん〜。困ったねぇ」
「はひぃ」
力無くうなだれるハルに、一緒に悩んでみるものの…話しがよく分かっていない京子だったりする。
『ハルちゃ〜ん』
そこにへタイミングがいいのか、悪いのか…元気に入り口からピョコンと顔を出し、登場する名前。
「はひ〜っっっ!!名前ちゃん!?」
『ハルちゃん。あっ!!きょこちゃんだぁ』
名前が、トコトコと二人に近づくと、ニコニコ笑う京子に。隣で、ワナワナと焦るハル。
名前は、京子に元気よく笑い掛ける。
『めりいぃくりすます。きょこちゃん』
「メリークリスマス。名前ちゃん」
ニコリと名前に笑い掛ける京子に、ぎゅっと抱きつく名前。
そのやり取りを、ハルは内心ドキドキしながら眺めている。
名前の笑顔を見るのは嬉しいが…。今日ほど重く感じるものは無いかもしれない。
京子にくっ付いていた名前が、クルリとハルに顔を向ける。
ドキッ!!
『ハルちゃん』
ドキドキッ!!
『めりいぃくりすますぅ』
京子の腕から抜け出して、ハルに抱きつく名前。
「はっ、はっ、はひ〜っ!?」
可愛い名前に抱きつかれて嬉しいはずなのに、どうしても体が強張り緊張してしまう。
いつもと違うハルに、不安そうな顔で見詰め、首を傾げる。
『ハルちゃん?』
罪悪感に耐えられず、名前をぎゅっと抱き締めると、謝罪の言葉を名前へ投げ掛けた。
「名前ちゃん。ごめんなさい!ハルは、ハルわぁぁー」
『ハルちゃん?どしたの?ないちゃだめだよぉ?』
よく分からない事態に、ハルの頭をいい子いい子と撫でる。
「サンタさんの事です!」
『サンタさん?』
「は、はい…」
ずずっと、鼻を啜る。
『サンタさん!すごぉぉいねっ。ぷれぜんとぉ。いっぱいもらえたよぉ』
「はひ?」
名前の言葉に、意味が分からず、キョトンとする。
「そ、それはどう言う…事でしょう?」
『ハルちゃん!めりいぃくりすますだよっ』
「……」
ハルは、泣き顔をこすり、名前の極上の笑顔を見詰める。
『ハルちゃん?めりいぃくりすますぅ』
何が何やら分からないが、いつの間にか問題が解決してしまっているようです…。
一体どうして?何があったの?
もしかして、雲雀さんが何かしてくれたんだろうか?
考えるものの答えは出て来ない。
でも、名前の笑顔が嬉しくてハルも笑顔を返す。
「名前ちゃん!メリークリスマスですぅ」
なんだか良かったと一安心。
でも…一体
どんなお願いだったんだろう?
そばにいた京子が、さり気なく名前に問い掛ける。
「名前ちゃんは、サンタさんに一体何を、お願いしたのかな?」
『ん?あの…あのね…』
「うん」
「名前ちゃん。是非とも教えて欲しいです」
京子とハルに問われ、どうしよう…なんて悩んでいたようだったが、頷くと二人に、こしょこしょと耳打ちする。
『あのね、んとね、くりすますぅに、大好きなみんながぁ〜ニコニコしてほしいって〜おねがいしたんだよっ!!サンタさん。ちゃんとおてがみ、みてくれたの…』
名前の言葉を、静かに二人は聞いている。
『んとね、きょうやくんでしょ、てつさんでしょ、ツナさんでしょ、たけしくんでしょ、はやとでしょ、きょこちゃんでしょ、ハルちゃん。みんなわらってくれたよ』
もじもじとハニカむ名前。
ハルは、ウルウルして来る瞳をこすり、思わず力一杯名前を、ぎゅっと抱き締めた。
「もーっっ!!何なんですかそれ!名前ちゃん!素敵すぎます!ありえません!!名前ちゃんたら、極上の天使みたいですぅ」
『ハルぢゃん!!ぐるじぃ〜よぉ』
「駄目です!もーっっ離せません!」
そんな二人を、隣で楽しそうに見ている京子。
「名前ちゃん。サンタさんに、お願い叶えて貰えて良かったね」
『うん』
苦しいながらも、嬉しそうに笑ってハルにすり寄りながら、京子に頷いた。
「さぁ〜クリスマスの準備しなきゃだね。ハルちゃん頑張ろっ」
「はっ!!はい!!名前ちゃんの為に、美味しいものいっぱい作っちゃいますねっ」
*******
みんなで楽しい
クリスマスパーティー
ハルと京子が、頑張って作った料理と、クリスマスケーキ。
名前はどれから食べようと目移りしてキョロキョロしまう。
そんな名前を嬉しそうに見ているハルは、悩みも消えて心は晴れ晴れ。
そう言えば…サンタ件では、雲雀に迷惑を掛けたと思い部屋を見渡せば、少し不機嫌そうな顔をしながら部屋の隅で料理を口いっぱいの名前を見守っている雲雀の姿を見付ける。
……。
やっぱり、一言言うべきですよね…。
緊張しながら、雲雀の横に歩み寄る。
「ひ、ひ、雲雀さん。ケーキでも如何ですか?」
声を掛けるのに何かきっかけを…と、ケーキを皿に取り分け持って来たものの…
「いらない。君が食べれば?」
呆気なく断られてしまった。
「あ、あのっ。先日は、お騒がせしてしまってすみませんでした」
ペコペコと頭を下げる。
「……別に」
「名前ちゃんの欲しかったものが…あんなに感動的だなんて思いませんでした!」
その言葉に、今まで無関心だった雲雀は、ハルにゆっくり視線を向ける。
はひっ!?何か変な事、言いましたか?
「聞いたの?」
「はひ?」
「欲しかったもの」
微かに首を傾げてハルに問い掛ける雲雀の、仕草にドキリとする。
わわわっ!!なんか、珍しいものを見てしまった気がします。なんか、可愛い。
「ねえ」
雲雀に急かされ、我に返って焦るハル。
「はいっ。えっとぉ…実はですね…」
ハルと雲雀のそんなやり取りのなか、名前は、ローストチキンを口いっぱい頬張って満足そうにモグモグしていた。
「名前ちゃん。楽しんでる?」
ツナが、名前のためにオレンジジュースを持って話し掛ける。
『うん。おいしいぃ〜』
美味しい=楽しいと言う事らしい。
「そっか、作った京子ちゃんとハルが喜ぶよ」
チキンにかぶり付きながら、名前の視線が、壁際の雲雀に行く。
『あーっっ』
急に口からチキンを皿の上に落とす名前。
「名前ちゃん?どうしたの?」
名前の動きに付いていけないツナは、どうしたんだろうと不思議そうに、名前の視線の先を目で追った。
ニコニコ笑う名前は、ツナに近付くと、
『あのねっ。きょうやくんとぉ、ハルちゃんはぁ、なかよしなの』
「はぁ?ハルと雲雀さんが、仲良し?」
有り得ないよと笑うツナ。
ハルに視線を送れば、雲雀と何やら話をしているものの…あのハルの緊張ぶりからして有り得ない。
『えーだって、ハルちゃん。きょうやくんすきっていったもん』
「ハルが?」
真剣に頷く名前。
そん訳…ないだろ?
え?マジ?そうなの?
だってハルは…。
名前の言葉に、思わず惑わされ、困惑気味な顔をする。
「そう…」
「そーなんです!名前ちゃんたら本当に、可愛くて…天使のようです」
力説するハル。
「…知ってる」
「はひ?」
「名前は…僕にとって…」
言い掛けながらも、不意に言葉を止める。
「これは、君に言う言葉じゃないから…。本人に言うよ」
名前の要件が終わってしまえば、ハルへの興味はない雲雀。
その場から立ち去り、名前の元へ歩いていってしまった。
雲雀の言葉を全て聞いた訳ではないが、意図するセリフは想像出来る。
思わずハルの方が赤面してしまう。
「なっ、なっ、なんて…ラブラブなんでしょうかぁぁ!雲雀さんは、名前ちゃんへの愛が溢れてますぅぅ〜。はぁ。ハルも、ツナさんに言ってもらいたいですぅ」
ほんのり赤面して、物思いに耽る。
「…ハル」
「あっ!ツナさん。はひっ?どうかしましたか?あ、ケーキ食べます?」
何時になく真剣なツナの顔に、なんだろうと首を傾げる。
「ハルは…」
「?」
言い掛けて、ツナは、ため息を付く。
「どうしたんですか?」
「ん〜別に、なんでもない。そのケーキは、ハルが食べれば」
そうですかと、もらい手が無いケーキをパクリと食べつつ、立ち去るツナを見送った。
「ん〜ツナさん。どうしたんでしょうか?」
一方、こちらでも食べていた。
モグモグ…。
「名前ちゃん。凄い食欲だねっ」
『うん。おいしいよっ』
「ふふふ。ハルちゃんと頑張って作って良かったなぁ」
ふわりと笑う京子に、食べていたポテトを『たべる?』と、差し出す名前。
「名前ちゃんが食べてっ。でも…食べ過ぎには注意だよ」
差し出したポテトを持ったまま、頷くと、名前の持つポテトを、不意に訪れた人物がパクリと食べる。
『う?』
「食べ過ぎ」
『あ〜っ!!きょうやくん』
「お腹、痛くなっても知らないよ」
雲雀からのお小言に、『う゛ー。』と小さく唸る。
雲雀は名前に手差し出すと、名前も雲雀に手を伸ばして、雲雀の肩に顔を付けると、雲雀は、ひょいと名前を抱き抱える。
「そろそろ帰るよ」
『かえんの?』
少し残念そうな顔をしながらも素直に頷く。
「このまま居ると、名前が、一人で料理を食べ尽くしそうだしね」
『え〜っ!!んなたべないもん』
「食べるよ」
む〜っと口を尖らせる。
「雲雀さん帰るんですか?」
そばにいた京子が声を掛ければ、頷く。
「あの、名前ちゃん、雲雀さん。ちょっとだけ待ってて下さいね。ハルちゃんを…」
ハルを呼びに行こうとする京子の姿を目で追う雲雀。
直ぐに名前と雲雀の前に戻って来た二人の手には、可愛くラッピングされたプレゼントがあった。
京子が、それを名前に手渡す
「名前ちゃんへ。クリスマスプレゼントだよ」
『ぷれぜんとぉ?』
「はい。京子ちゃんと二人で作ったんです。気に入ってもらえると…嬉しいんですけど」
プレゼントの中身を開けてみると、それは、サーモンピンクの可愛い手編みのマフラーと手袋。
「マフラーが私で、手袋は、ハルちゃんが作ったんだよ」
「気に入ってもらえましたか?」
マフラーと手袋を見て、フリーズしている名前。
「はひ?気に入りませんでしたか?」
気に入らなかったのだろうかと、不安気なハルと京子。
「名前?どうしたの?」
雲雀が、そっと声を掛けると、止まっていた名前が、目をパチパチさせる。
「これ…わたしの?」
じっと見つめ、視線を自分を見詰めている三人にへ向けて、問い掛けるような視線を送る。
「そうだよ」と言う京子に、「もちろんです」と言うハル。
雲雀は、抱き上げていた名前を下に下ろすと、名前にマフラーを巻いて、手袋を付けてやる。
「良かったじゃない」
自分にもらえた物だとやっと認識出来たのか、呆けていた顔も、みるみる内に、瞳を輝かせながら頬を高揚させて、とても嬉しそう、自分の顔に手袋を付けたり、マフラーに頬ずりして、その嬉しさを更に堪能している。
「名前ちゃん…気に入りましたか?」
再びハルが問い掛けると、嬉しそうに思い切りブンブンと頭を縦にふる。
振りすぎて足元がよろけて雲雀にぶつかってしまい、背中をそっと支える。
「頭振り過ぎ」
『えへへ…だって、うれしいんだもん』
照れ笑い。
『ハルちゃん!きゅこちゃん!ありがと〜ぉぉぉっ!』
笑い返してくれる二人に、名前も笑う。
********
名前は、思いもよらないプレゼントに、雲雀の屋敷に戻った後も、上機嫌で、もらったマフラーと手袋をしたままニヤニヤしていた。
「それ…いつまでしてるつもり?」
雲雀は呆れ顔で、問い掛ける。
『え〜っ。ずっとしてんもん』
いや。それは無理。
そう突っ込むものの、暑くなれば自分で取るだろうと、そのままにしておくと、やはり暑くなって来たのか、赤い顔をしながら、小声で『あちぃ…』と呟く名前。
雲雀はクスリと笑い、「だから取りなよ」と雲雀が言えば、その提案にコクコク頷き、マフラーと手袋をとる。
『はう〜っ』
暑さから解放された事で、名前は、思わず力が抜けたような声を上げる。
「だから言ったじゃない」
暑くなって赤い名前の頬に触れる雲雀の手が、ヒンヤリしていてとても気持ちがいい。
甘えながら雲雀にくっ付く名前を、優しげに見詰める。
「今日は…よかったね」
『う?』
「ハル達にプレゼントを貰ったり、パーティーがあったり、それに…サンタから、凄くいい物…もらえたんでしょ?」
『うん。いぃ〜っぱいで、あたまぐるぐるなるくらい』
そう言って、両手をいっぱいに広げて『こんくらいより、も〜っと、すごいいっぱいっ』
嬉しさをどう表現したらいいのか分からなくて、広げた手をブンブン振り回す。
「……」
『んとーでもね』
振り回す手の動きをやめる。
「でもなに?」
『でも…きょうやくんがいるのが、いちばんうれしいよっ』
輝く瞳で、そう雲雀に告げる。
名前の言葉に、一瞬目を見開くと、直ぐに名前に顔を近づける。
『う??きょうやくん?あれ?あれ?』
「名前…」
『?』
「僕も…名前と一緒で嬉しいよ…これが、一番のクリスマスプレゼントだよ」
名前の髪をそっと撫でる。
「名前は、僕にとって、一番の女の子だよ。
僕に、こんな事言わせる子は、名前しかいない」
自分の告白に、柄にもなく少し照れたように赤い顔を、名前から見えないように、ぎゅっと名前を抱きしめた。
『ぐぁぁ!ぎょうやくん!!ぐるじぃぃ〜っ』
そして、甘い筈なこんな時でも、色気も何もない名前の声が、部屋に木霊していた。
サンタさん。ありがと。
とっても、すぺしやるなぷれぜんと。
きょうやくんだいすきっ。
-END-
2009/12/29
* ATOGAKI *******
長い。
あれもこれもと書いたら結果、こうなっちゃいました。
今回…まだ本編に出てないキャラは、名前ちゃんと絡めませんでしたし…。
了平兄ちゃんも出せてないっすー(°□°;)
ヤベエ。
さて、なんかちびっと書き切れてない所があるので…。
ちょいオマケを…書いてみました。
良かったらチラリと読んでみてください。
→→→
今更ですが。
皆様☆メリークリスマス☆
いつでもみんなが笑顔でありますように。
↑名前ちゃんの真似っこ…。
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