seven
いっしゅうかんて…ながい?みじかい?
雲雀との散歩から戻り、広い和室で両手を広げながら仰向けに転がっている。
名前の柔らかい髪が無造作に畳に散らばったその上を、ヒバードがチョコチョコと歩き回っている。
公園で雲雀から、7回寝たら帰って来ると言われて、”7”と言う数字に驚いたものの、実際どの位の日数なのか分からないでいた。
『ななかいねなきゃなんない。ななかいって…どんくらい?』
小さな指をひとつひとつ折って数える。
『んとーいち。にぃ。さん。よん。ごー。んと…』
右手の指を、5つまで折ると、グーの形になった手を見詰めながら眉間にシワを寄る。
『なな、ごーより…いっぱい…?』
“7”まで数えられず、とりあえず”5”よりは多いのが分かった。
仰向けの姿勢から勢い良く上半身を起き上がらせると、名前の髪にヒバードの足が絡まってしまい思わず頭が畳に引っ張られる態勢になってしまい、頭を抑えながら髪に絡んだままのヒバードを持ち上げる。
『も〜っ!!ヒバードぉーいたいィー』
「イタイ?イタイ?」
『うーっ』
名前は、顰めっ面で立ち上がり、襖を勢いよく開けると、和室から廊下に飛び出しパタパタと走り出し、キョロキョロと辺りを見回す。
暫くして、視線先に探していた人物を発見すると、まだ髪に絡んだヒバードを持ったまの体勢で、その人物の名前を呼びつつ走り寄る。
『てつさぁぁぁーん!!!!』
大声で呼ばれた本人は、近づいてくる名前に気付き、顔に似合わず優しい笑い顔を向けている。
「名前さんどうしました?おや?その頭は…?」
草壁に走り寄る名前の頭にくっ付いたヒバードを見ながら屈み込むと、ヒバードが絡んだ髪を解こうと手を伸ばす。
『んとね、ヒバードとくっついちゃったんだよぉぉ!!でね、でね、んとね、ななってどんくらい?ごーのつぎ?』
ヒバードの事よりも、名前にとっては”7”と言う数字の方が大切で、草壁に”5”までの数を、先程と同じ様に指を一本づつ折って見せ、グーの形になった数え終えた手をかざす。
草壁は、絡んだ髪からヒバードを救出し、ヒバードを名前のかざしている手と反対の手に乗せると、名前のグーの手の指から、人差し指と中指をそれぞれ伸ばし、5からの続きを名前に向かって数えてやる。
「6、7。これで、7ですよ」
グーから、指が2本飛び出している自分の手を見つめる。
『なな…ん……』
なにやら自分の中で懸命に考えている名前。
『てつさん!あのね、もーねる』
「は?」
数字の話から、何故か寝ると言い出した名前の言葉に意味が分からず、不思議そうな顔を向け、理由を聞く。
『だってね、なな、ねなきゃなんないの!なな、ごーよりおおいから、はやくななになるようにすんだよ!』
そう言いながら草壁を懸命に、和室へと引っ張って連れて行こうとする。
寝ると言われても、今はまだ昼過ぎで寝る時間でない事を名前に言い聞かせるが、ガンとして『ねる〜ぅ』と言い続ける名前に、草壁は溜息を付き、根負けするしかない。
そして……
夕刻となり用事を終わらせ戻って来た雲雀は、和室で既に寝ている名前を見下ろしていた。
「ワオ。…哲。名前は、なんでもう寝てるの?」
自分の後ろに畏まりながら座る草壁に振り向く事無く、質問の声だけを投げ掛ける。
「昼過ぎに…急に寝ると言われまして…」
雲雀の背に、草壁は困った様な顔を向けている。
「……」
雲雀は溜息混じりで、眠る名前に近づくと、名前の柔らかい頬を指で突っつく。
流石に、昼過ぎから寝ていて眠りが浅くなっていたのか、寝ぼけたような顔をしながらも目を覚ました名前は、目をクシクシとこすりつつ、自分を見詰めている雲雀に顔を向ける。
『う…。きょうやくん?おかえりなさぁ…い』
小さな欠伸を一つ。
「ねぇ。寝るの早過ぎじゃないの?」
ん…。
ぼやけた頭が次第に覚めて、名前はいつもの調子が戻ったのか、布団をパフパフと雲叩きながら雀に向かって、何故か自慢気に笑い掛ける。
『あんね、なな、ながいからね、ひとつねたの』
「……」
『なな、すくなくなった?』
嬉しそうに笑う名前の頭を、くしゃりと撫でる。
「名前…。僕は、まだ出掛けてないから減らないよ」
雲雀の言葉に、キョトンとする。
『まだへらないの?』
「減るのは僕が出掛けてからだよ。それに、1日に何回も寝ても1日1回しか減らないから」
『えええ〜っ!!』
名前の驚きの声が、部屋に木霊し、その声に顔を歪める雲雀。
「五月蠅すぎ」
名前の鼻を摘まんで、意地悪く笑う。
『う゛ーごへんなひゃひぃ…』
抓られたままで上手く喋れず、眉をしかめ唸り声を出す。
「言ったでしょ?一週間なんてあっと言う間だよ」
名前の鼻を摘まんでいた指を離すと、その手で名前の頭を小突く。
「でもね!なな、ごーよりおおいよ」
雲雀の目の前に、小さな手でにグーを作って見せ、不満そうに口を尖らす。
その小さな手をジッと見詰める雲雀は、その手を優しく手に取ると、その小さな手にチュッとキスを送る。
「ん…そうだね」
『…うん』
公園では待ってると言い切ったものの、雲雀と離れたくない気持ちがいっぱいで、雲雀が困るのが分かっているのに…我が儘を言ってしまう。
そんな名前の枕元で丸くなっていたヒバードが、不思議そうに首を動かしながら、布団から体を起こした状態の名前のお腹の所にチョコチョコと移動して来る。
「ヒバリオデカケ ルスバン ルスバン」
そう繰り返すヒバードを、見詰める名前。
『わかってんもん』
そう言ってしばらく俯いていた名前は、急に布団から勢いよく立ち上がり、フンとガッツポーズをしながら雲雀を見詰める。
『なな!ながくない!すぐだもん…ねっ?』
意気込むものの言葉尻は何故か疑問系になってしまっている。
そんな名前を抱き寄せる雲雀は、思わず笑ってしまう。
「帰って来たら、どこか行こう」
『ほえ?おでかけ?』
「ただし…いい子にしてたらね」
『うん!いいこしてるよ!』
抱き寄せられながら頭を撫でられている名前の頭の中は、既に雲雀が帰って来た時のお出掛けするという事に飛んでしまい嬉しそうに笑っている。
雲雀の腕から抜け出すと、布団の上で『やったぁぁぁー』と喜びながらぴょんぴょんと弾んでいる。
雲雀は、飛び跳ねている名前に、呆れた顔を向けながらも口元は薄っすらと笑っている。
「泣いたカラスがもう笑ってる…。」
ぼそりと呟くと、名前はクルリと振り返り、
『ないてないもん。カラスさんじゃないよーぉぉぉ』
名前は、雲雀を見詰めながら頬を膨らませつつ、唇を尖らせた。
** おまけ ******
ジタバタ…
ジタバタ…
「ねぇ…いい加減に寝なよ」
『う?』
布団の上で、ゴロゴロ転がる名前。
時刻は、既に次の日に変わっている。
『だってねむないよ?』
パチパチと瞳を輝かせている。
「昼間寝過ぎるからだよ。明日の朝、起きれないんじゃない?」
そう言われれば、フンと鼻にシワを寄せながら雲雀を見つめる。
『だいじょぶだもん!』
「大丈夫じゃないよ」
雲雀に無理やり掴まれ、布団の中に押し込まれる。
『う〜っ』
不満の声を上げるものの、雲雀に抱きしめられている状態に不満がある訳もなく、観念して静かになる名前の頭に雲雀は顔を近づけて、おやすみのキスを落とすと、優しく囁いた。
「いい子だね…。おやすみ。名前」
僕の夢でも見なよ。。
2009.11.9
* ATOGAKI ******
あれ?本編久々UPですか???
ハロウィン企画があったせいなのか…あまり意識がありませんでした。
お待たせしましたぁ〜(えっとー待っててもらえてたかなぁ…)
さて…雲雀さんたらまだ…旅立ってません。
次回は、旅立っている筈です。(多分)
でもそうすると…少しの間、名前ちゃんと、雲雀さんの絡みがぁぁぁ!!!
なんて言いつつきっと、絡みますよ!
雲雀さんが、イタリアでジッとしてる筈ないです!
でも…どうやってですかね??
んー。分かりません。
ちょっと雲雀さんに聞いてきますね(笑)
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