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Spacious room

雲雀に手を引かれ、並盛神社の石灯籠脇をくぐると、何故か目の前に長い廊下が広がっていた。

『おおおぉ〜!?』

意外な展開に、思わず驚きの声をあげる名前。
キョロキョロと物珍しく見回す度に、歩みが遅くなってしまい、雲雀と歩く速度が合わずによろける。

「ねえ、しっかり歩いてくれる?」

名前に合わせるために、いつもよりゆっくり歩いている雲雀だが、これ以上は合わせる気が無いらしく、顔をしかめながら名前を引っ張る。
引っ張られながらも、懲りずにキョロキョロする名前は、何度もよろけてしまうものの、雲雀と繋いだ手は離さない。

そんな二人が歩く姿を、背後から不思議な顔で見つめる人物がいた。

「恭さん。お帰りなさい」

「……」

雲雀は、その声で歩みを止め、振り返る。
名前も、声のする方を振り返ると、キョトンとした瞳で声の主を見つめた。
黒いスーツに、リーゼントの背の高い青年。
草壁哲矢。
名前は、急に現れた人物に驚き、雲雀の後ろに隠れながらも、草壁をチラチラと覗き見る。
雲雀は心配ないとでも言うように、名前に触れる。
草壁をジッと見詰めていた名前は、少し落ち着いたのか、おずおずと姿を見せる。

おくちにはっぱ…なんで?

「恭さん。この子は?」

「哲。食事一つ増やして」

「へい…(この子の分…ですね?)」

必要な事だけを告げ、雲雀はまた歩き始めた。

「話は後で。名前、行くよ」

『わわっ。ハイィッ』

草壁は、小さな客が増えた事で、新たな夕食のメニューを考えながら、奥に進む二人のアンバランスな姿を、面白いものを見たと言う顔で眺めていた。

恭さんが小さい子を連れて帰ってくるなんて…珍しいと言うより…初めてだな…。



『おぉぉ〜っ!?』

長い廊下を抜け、広い和室に通された名前。
またもや驚きの声を上げながら、大袈裟に大きな部屋をぐるりと見渡す。

「名前。ちょっとここに居て。すぐ戻るから」

『え?』

一人になるのが不安なのか、名前は雲雀をじっと見詰める。

「着替えてくるだけだから…すぐ戻る。この子と遊んでなよ」

ヒバードが、名前の頭にちょこんと乗る。

「名前をカタカナで!名前をカタカナで!」

ヒバードの存在が、名前の不安な気持ちを和らげる。

『はいぃ!!』

「……。返事はいいけど、声…必要以上に大きい」

眉をひそめる雲雀に、名前は気にせず『えへへ』と笑う。

「名前をよろしくね」

『名前をカタカナで ミテル。ミテル。』

ヒバードの返事を確認し、雲雀は部屋を後にした。

広い和室に残された名前。

「名前をカタカナで!名前をカタカナで!」

雲雀に会ってからまだ数時間しか経っていないのに、名前にとって、驚く事ばかりが続いている。

雲雀の去った後の部屋を、もう一度見回す。

広い和室。

顔を輝かせながら「ふわぁ〜っ」と大きなため息を着く。

『ヒバードぉ!おっきいおへやだねぇ〜。ろうかも、とおってもながいんだもん!びっくりしちゃったぁ』

「ビックリ!ビックリ!名前をカタカナでオドロイタ」

えへへ




雲雀が着流しに着替え、部屋に戻ると、部屋でヒバードを『キャハハハ…』と笑いながら、追いかけ走り回る名前がいた。
その騒がしさに、思わず驚く。

「ワォ」

名前は、戻って来た雲雀の姿を発見すると、パタパタと嬉しそうに走り寄り、雲雀の足にしがみ付く。

『おかえりなさいぃ!』

雲雀は、自分にしがみ付く名前に驚きながらも、その仕草に、無意識の笑顔を見せる。
しかし、その貴重な雲雀の笑顔は、残念ながら…足にしがみ付いている名前には、見ることは出来なかった。

「ねぇ。走り過ぎじゃない?」

名前は、ハニカミながら雲雀を見上げる。

『えへへ〜っ。だってね、こぉーんなにひろいおへや、はじめて!はしりたくなっちゃうよ!すごいねーひろーい』

楽しくて仕方ないと言わんばかりに興奮する名前の頭に、手を乗せる。

「それは良かったね。でも暴れないでくれる?」

そっけない台詞だが、名前の頭の上に乗せた手は優しい。

『は〜い』

ニコニコ笑いながら返事を返す。

「本当に分かってるんだか…」

名前に聞こえるか、聞こえないか微妙な小さな声で呟いた。

『あのね』

「なに?」

『あのーそっちの…ながいろうか、はしっていい?』

頭を少し傾けつつ、雲雀にお願いの視線を送る。
走りたくてたまらないというオーラが目いっぱい感じられる名前を見下ろし、目を細める。

分かってないじゃない…。

雲雀は小さなため息を一つ。

「それは、僕の居ない時にして」

雲雀にしては、珍しい程の譲歩。
いつもの雲雀なら、絶対自分の居ない所であったとしても、その希望は通らない。

……。
なんだかこの子…調子が狂う…。

でも、そんな事を知らない名前は、『やったぁ!』と小さくジャンプし、襖から廊下に顔だけ出した状態で長い廊下をワクワクしながらながめていた。

はやくはしりたいなぁ…




名前が、この長い廊下を目いっぱい走れるのは、まだ少し先のお話…。



2009.5.7
2009.11.30修正

.* ATOGAKI *******
はい!お疲れです☆
今回は、ちびっ子は広いところにいると意味も無く走り回りたくなっちゃうって話…。
ってー全然話進行してないじゃないですかぁ!!!
あははー
さて、とりあえず雲雀亭?に入った名前ちゃんですが
なかなか、1日が終わらないですねぇ〜まだご飯も食べてないですよ

お話は、ゆっくり進みますので
名前さん。良かったらまた読みに来てくださいね♪

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