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(一万打記念)遊ぼう*2(獄寺編)

『ぷーる、ぷーる♪おっきーおふろぉ♪♪』

獄寺に引っ付きながら、謎のプールの歌を歌い歩く名前。

「名前いいか、ちょっと荷物取って来る間この車の中で待っとけ」

四駆のアウトドア仕様車の窓を全開にしつつ助手席に押し込まれる名前。

「すぐ戻るからな!余計なところに触るんじゃねえぞ!!」

『は〜い』

よけいなところって…どれかなぁ??

車の中をキョロキョロと見回しいろいろ興味があったが、言われた通りグッと我慢する。

『うー、がまん。がまんんん』

車窓にちょこんとヒバードが留まりそんな名前を不思議そうに、ちょこちょこ首を傾げて見ている。

『ヒバードも、さわっちゃだめだよぉ!』

自分が触りたいのに、ヒバードを注意してみたりする。



*******************

名前を車に一人残し、屋敷に向かう獄寺。
大人しくしとけと言ったものの、何かやらかしそうで足早に自室に戻り素早く荷物を用意する。
屋敷に一緒に連れて来ても良かったのかもしれないが…一緒の所を誰かに見られ、何か言われるのが気恥ずかしく躊躇ってしまった。
特に、ツナに見られたら何と言われるか…。

荷物を持ち名前の元に戻ろうと足早に玄関へと向かう。

「あれ?隼人??」

後一歩で外にと言う所で、獄寺の敬愛なる人からの声が掛かり、ギクリとして背筋を伸ばしつつ焦る心を抑え、ゆっくりと後ろを振り返った。

「じゅ、十代目っ!」

「さっき出掛けてなかったっけ?」

獄寺に問いかけるツナは、不思議そうな顔でこちらを見つめている。

「あ、いやぁ…これからドライブに出かけようかと思いまして…」

獄寺なりの平静を装っているものの、ツナの視線が痛く感じる。
それは多分…獄寺が嘘を付いた罪悪感で思っているだけで、ツナ的にはそれほど気にはしていなかった。
だが、獄寺の罪悪感により焦りの態度が出てしまい、ツナは不振な顔で獄寺を見る。

「……ふ〜ん。ねぇ、隼人一人でドライブ?」

「は?え、ええ勿論。そうですが…」

「ふーん。気を付けてね」

にこやかに笑って手を降るツナに見送られ外に出る。
その笑顔が獄寺には最大の攻撃となっている。

じゅ、十代目〜すみません。べっ別に内緒じゃないです!!内緒じゃないんですがー!!!!

と、結局言えず内緒になってしまった事に、ツナへ届かぬ謝罪を胸にする。


獄寺を見送った玄関で、ツナはいつもと違う獄寺の態度を不審に思う。

「うーんでも、なんであんなに焦ってたのかなぁ…??なーんか隠してるなぁ〜帰ったら隼人を攻撃して遊ぼうかなっ」

ツナは目を細め若干…黒い微笑みをしている。

「おい。ツナ!何してんだ」

「ん?あ〜ごめん。隼人が出掛けるんでちょっと見送り」

「ったく。オメーは仕事が溜まってんだぞ。さっさとやっちまえ、ダメツナ」

「分かってるって…ちぇ。オレも休みが欲しいなぁ」

ブチブチ文句を返しながら、執務室に向かうツナ。
その背後からの激しい蹴りを食らい思わずよろけて、情けない顔で自分を蹴った張本人に抗議する。

「たく〜リボーン。少しは、オレに優しくしてくれよなぁ」

「オレは何時でもスパルタだぞっ」

「あ〜……ですよね〜」

とほほ…。リーボーンに逆らえる筈も無く、肩を落とすツナに、ニヤリと意地悪い微笑みを返すリボーンは、執務室へとツナを引き摺って行った。

「仕事が終われば休んでいいぞ」


*******************

獄寺の車に乗り、窓から顔をチョンと出して獄寺の戻りを待つ名前。

『まだかなぁ〜』

「マダ、マダ」

ヒバードと大人しく獄寺の帰りを待っているものの、出かけるのが楽しくはしゃぐ気持がウズウズして、名前がジッとしている事がそろそろ限界に差しかかろうとしていた。

「あれ?名前じゃね〜か」

『ん?』

キョロキョロと周りを見回せば、車の後方に見慣れた人物が意外そうな顔でこちらを見ている。

「あ〜ぁぁぁ!たけしくん!」

「よう!名前。あり?この車…獄寺のじゃねえか?なんで、名前が乗ってんだ?」

興奮していた所での山本の登場に喜び、車の窓枠に両手を乗せシートにに立つ形で窓から体を乗り出し手を振る名前。
危なっかしい体勢に、山本は慌てながら名前に近づき乗り出した体を支えるように掴む。

「んなに乗り出したら危ねぇだろ。気を付けろよ」

支える山本の胸にくっ付くいて、キャーキャーと興奮しながら嬉しそうに、頬を染めつつ見上げ笑い掛ける。
そんな名前の頭を、山本の大きな手がワシャワシャ撫で、ほのぼのとした空間を醸し出している。

「げっ!山本」

「ん?」

獄寺の声に、名前を支えたまま振り向く山本。
嫌な野郎に発見されてしまったと、獄寺は顔を歪ませつつ後ずさる。

「よう!獄寺じゃねえか」

「なっ、なんでお前がそこにいんだっ」

焦りながらも、攻撃態勢を忘れない獄寺。

『あ〜っ。はやとおかえりぃ』

そんな焦る獄寺の気持を余所に、元気に手を振る名前。山本も、名前の真似をしながらニヤニヤ笑い手を振る。

「なんでって言われてもなぁ…ツナに用があるからだろ。お前こそ何してんだ?」

サラリと獄寺の問を交わし、反対に山本が質問を返すと、獄寺は曖昧な態度でなんとも煮え切らない。

「名前とどっか行くのか?」

ギクリ。
天然の山本にも分かり易いその獄寺の態度に、苦笑いをする。
山本のその態度が感に触り、不機嫌そうに顔を歪ませる獄寺。

『あのね、はやととぉ ぷーるいくのぉ』

「へ〜…プール」

名前の言葉に「そうかぁ」と返事をし、黒い微笑で獄寺を見る山本。
若干…怖い。

「んだよ?たまたまコイツに会ったら、そういう事になったんだっ!!」

「たまたまね〜」

山本の視線に、別に悪い事をしている訳でもってないのに何故か閥が悪く気分が落ち着かない。

「ウルセェなぁ。ほっとけっ。じゃあな」

山本を残し、獄寺はそそくさと車に乗り込むとエンジンを掛ける。

「んな照れる事ねえのに。べつに何にも言ってねぇじゃねえか」

目は口ほどにものを言う。
まさに山本のその視線が、言いえて妙な言葉である。

「名前、プール楽しんで来いなっ!で、今度は、オレとどっか行こうぜっ」

名前に笑い掛ける。

『うん。またね〜』

手を振る名前。
走り去る車に、山本もヒラヒラ手を振り二人を見送った。

なんだよなぁ〜獄寺の奴…。
帰って来たら、皆でからかってやるからな…。

ふふふ…。ここにもまた一人、黒い人物となった山本が出来上がっていた。



*******************

『うおぉぉぉぉ〜!!!!!!』

走る車の窓から顔を出し、大きな口を開けながら楽しそうに風を受ける名前。

「バカこら!危ねぇだろうがっ」

『ふぇ?』

大きく口を開けたまま、運転する獄寺に振り向く。

「たく…女の子なんだからそんな間抜けた面してねぇで、ちゃんと座ってろ」

『む〜っ。だってーおもしろいよぉ。かぜがね、ぶおぉぉぉ〜ってなんの』

「面白いよっ。じゃねえんだよ!唯でさえ、チャイルドシート無く乗せてんだからな」

『ちゃい??う???なに?』

「とりあえず大人しく座ってろって」

『はーい』

シートにちょこんと座り直し、足だけ楽しそうにぶらぶらさせる。

「あ〜山本の野郎。ぜってぇ十代目に言いやがるだろうなぁ…だったらさっきちゃんと言えば良かったぜ…」
運転しながらガクリと肩を落とし落ち込む獄寺の姿に小首を傾げ、名前は、獄寺の腕を突っつく。

「はやと…だいじょぶ?」

「あ?」

見れば心配そうな顔で見ている名前。

「あーわりぃ、何でもねえ。既に考えても仕方ねぇし…」

心配すんなと言う様に、名前の頭をワシャワシャと撫でてやると、安心したのか笑う名前。
笑う名前が面白く、獄寺は運転しつつもワシャワシャと名前の頭を弄くり、その度にキャーキャーとはしゃぐ名前。
ひとしきり車内で騒ぎ、興奮して頬を染め獄寺に笑いかける名前が妙に可愛く思え……頭を撫でる手が何気なく、名前の柔らかそうなその頬に移動し触れる。

信号が赤に変わり、車は一旦停止する。

『ん?』

思った通りのモチモチした名前の頬を、獄寺の指が数回優しく撫でる。

『はやぁとぉ??』

獄寺の指が気持ちが良くて目を細めるものの、いつも違う態度が不思議で獄寺の名前を呼ぶ名前。

はっ!!

その声に我に帰る獄寺は思わず慌て、誤魔化す様に名前の頬を軽く抓る。

『いだぁぁ〜っっ!!』

優しいかった手から急に攻撃を受け、声を上げる。
名前は、何故抓られなければならないのか分からず涙目をしながら膨れっ面で獄寺を睨んだ。
その名前の膨れた頬を突っつき、獄寺は笑って誤魔化す。

「ワリィ、ワリィ。餅みてぇでついなっ」

『む〜。もちないよっ!!』

笑っているものの内心…では、理解出来ない自分の行動に慌てる。

な、何してんだオレ!!一瞬ヤバかったぜっ!!
って〜!!!何がヤバいんだってんだ???
ガキじゃねえか!!
オ、オ、オレは!!ロリコンじゃね〜ぞっ!!
これじゃぁ、雲雀の野郎と変わんねぇじゃねえかっ!!
でも…コイツ可愛くなくはねぇんだよなぁ…。
いや!何考えてんだオレ!!ガキは苦手なハズなんだぁぁぁぁ〜!!!

と、矛盾する心の葛藤に、密かに深呼吸をして落ち着こうと試みる。
ガキが苦手と言いながら、既に名前と一緒に遊びに行こうとしているのだから早く自分に気が付けと…誰知らず突っ込まれても可笑しくない獄寺隼人。
前途多難。

そして車内にてまたもやヒバードの視線が獄寺に冷たく突き刺さるのであった。

20090902


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