(一万打記念)遊ぼう*1(獄寺編)
「は?休みですか?」
抜けたような声で聞き返す獄寺に、微笑みつつ頷くツナ。
「たまには、1日ゆっくりしたらいいと思うんだ」
「いえ。休みなんて必要ないです」
「……。隼人は、働きすぎだよ。たまには息を付くのも必要だよ。これ…オレの命令」
表情は変わらず柔らかいものの、纏うオーラはそれに反比例している。
そんなツナに、獄寺が逆らえるハズもない。
「分かりました。では、1日休ませてもらいます」
「うん、ゆっくりしてよ」
さて…急に休めと言われてもどうする?
ツナの執務室を出て、廊下を歩きながら考える。
どこか行くと言っても直ぐに思い付く訳もない。
部屋でゴロゴロすることで折角の休みを消費しるのも勿体無い。
あえず、出掛けてみるかと屋敷を出た。
夏も終わに近づいてはいるものの、日中の暑さは夏のものとあまり変わらない。日差しは厳しく、これでもかと降り注ぐ。
取り合えず、涼しい場所を目指す獄寺の足は、本屋へと進んでいた。
とは言え、時間に余裕がある事からいつもの道程から少し遠回りをし、公園の中を歩いている。
公園の緑が暑さを少々抑えているのか、横切る風も涼やかに感じられる。
緑が、気持ちも安らかにしてくれているようなそんな気分になる。
たまにはこんな休みがあるのも良いものかもな…。
流石、十代目だ。
どんな時でもツナを持ち上げる獄寺。
園内の並木を歩いていると児童遊具場があり、ふとそこを見れば、見慣れた幼い子供の姿があった。
『おやまっ♪おやまっ♪たかぁたかぁ〜くぅ〜』
公園の砂場で、自作の歌を歌いながら砂山を作る名前。
名前の被る花柄の帽子の上に、ヒバードがちょこんと乗ってともに「ヤマ ヤマ」と繰り返している。
『ヒバードぉ!みて、みてぇ〜おやまできたよ』
嬉しそうに笑う。
ヒバードは、名前の頭の上から降りると、出来立ての砂山の頂上乗る。
『すごい?すごい?すごぉーいでしょう!したらぁ〜つぎもっとおっきいのねっ』
はしゃいで、次の砂山を作ろうと意気みつつも、暑い日差しに一息付き、持って来ていたストロー付の可愛いウサギ柄水筒の麦茶を飲もうと口を付ける。
『う〜むぎちゃない……』
持って来た水筒の中身が無くなっていて、ガックリとする。
せっかく遊びに来たばかりの公園なのに…まだ帰るのもなんだかつまらない。
ブーッと不満顔の名前の頭に、何やら重みを感じ上を向く。
「おい。暑い中…何してんだ?」
見れば、冷えた缶ジュースを名前の頭の上にのせる獄寺の姿が見えた。
『ふぉ?はやとだぁ〜』
驚きながらも嬉しそうに獄寺に笑い掛ける。
「炎天下で、帽子被ってたって日射病になっちまうぞ」
『ヒバードとぉやまつくってんの!おっきいでしょ』
ヒバードが乗る砂山を楽しげに指差をさす。
「あ〜すげぇ。すげぇ。って、お前一人?」
『え?ヒバードもいるよ』
「鳥は、人数に入んねぇだろう」
連れはいないのかと辺りを見回すが大人の姿は見当たらない。
「家の誰かに言って来たのか?」
『おぉ?』
獄寺に問われると、目を泳がせながら『ん〜ん〜』と唸り誤魔化している。
「言わないで来たのか?雲雀の野郎がよく許したなぁ」
『きょうやくんおでかけだもん』
「草壁は?」
『と〜わかんない。だってぇ。つまんないんだもん』
「たく…草壁の奴。ぜってぇ慌ててやがるぞ」
口を尖らせ獄寺を見る名前。
『ね〜ね〜はやといっしょあそんで?』
「あ゛?」
『あそぼ〜』
嫌そうな顔をしながらも、名前に懐かれ嬉しいのであるが…仕方なくと言った態度をする獄寺。
「ま、特に何がある訳じゃねぇしな。遊んでやってもいい」
『やた〜ぁ』
嬉しそうに無駄に走り回る名前を見て、笑いを堪える。
変わったガキだぜっ。
「とりあえず、勝手に出て来たんだろ?草壁に連絡入れとくぜ。あ、あと飲むか?」
獄寺の手にある、缶ジュースを受け取る名前。
『おれんじすきぃ』
「良かったな。さっき自販機で間違えて押したんだ。べ、別に、お前の為に買ったわけじゃねぇからな」
どう見ても、名前の為に買ったであろうジュースであるが…つい言い訳めいた言葉を言ってしまう獄寺。
そんな言い訳も、聞いているようで聞いていない名前は、冷えたジュースを嬉しそうに眺めている。
取り合えず、砂場から近い木陰のベンチに移動する二人と一羽。
獄寺はベンチに座ると、名前の持つ缶のプルタブを外してやる。
『ありがとー』
「ああ」
嬉しそうに飲む名前の頭を何気なく撫でる 。
『おいし〜』
「良かったな。……ん?」
ふと視線を感じ見れば、ヒバードの黒い小さい瞳が冷ややかに、獄寺をじっと見据えているような…気がする。
べ、別に疚しいもんは何もねぇ!
ヒバードを睨み返してみるものの、ムキになる自分も可笑しくねぇか?と自問自答。
「っと…草壁に、連絡しとくか」
獄寺が、草壁の携帯に連絡を入れれば、やはり名前が居ない事が分かり慌てていたようだった。
「そうですか、公園に…名前さんの、お気に入り水筒が無くなかったので、外にいったのかとこれから探しに行こうとしていた所だったんです」
安心した声の草壁。
苦労人だなぁ…と、少々同情する獄寺。
「あ、で…こいつしばらく借りるぜ」
「は?」
獄寺の言葉に、草壁の抜けたような返答が帰ってくる。
「今日たまたま休みで、名前が遊べって煩ぇから遊んでやるから…借りる」
草壁の返答が、一時遅れる。何やら考え、獄寺に一言言って電話は終わった。
「雲雀が、帰るのは夕刻ですので」
電話を切り、ジュースを嬉しそうに飲む名前を見ながら頭を小突く。
『うぉ?』
「夕方まで遊んでやる」
獄寺に嬉しそうな顔をキラキラさせ、『やたぁ〜』と、ベンチから飛び降り缶ジュース片手にピョんピョんとジャンプをする。
「だぁ〜!!!!んなに飛び跳ねると、ジュースこぼすだろうがぁ!」
『う…』
名前は、慌てて零していないかキョロキョロと周りを確認する。
『だいじょぶ!』
ニカッと笑い、獄寺の隣に戻りちょこんと座り、嬉しそうに獄寺の膝に寄りかかり見上げると、何して遊ぶのかなぁ〜と言うような顔で、期待の視線を送っている。
甘えられるのに慣れていない獄寺は、名前のそんな仕草に慌てる。
「ど、どこか行くか」
『うん。どこどこ?』
「あ…ん…。暑いしなぁ…プールなんてどうだ?」
取り合えず思い付いた事を言ってみると、『ぷ〜るぷ〜る…』と唱えている名前。
「もしかして…行った事ねぇのかよ」
『う…ぷ〜と、る〜ぅ?』
「いや…分ける意味わかんねぇから。プールてのは…言うなら…デッカイ冷たい風呂…みたいなもんだ」
『おっきいおふろ!?』
すご〜と、驚いた顔の名前。
プールでこれほどの反応があるのが面白く、ニヤニヤ笑う獄寺。
その獄寺に、またしても冷たいヒバードの視線を感じる。
なんだ…このバカ鳥…嫌な感じだぜ…。
雲雀の鳥だからな…態度が悪りぃのはしかたねぇか。
ヒバードを無視する事に決め、時間が惜しいと早速プールに行く事に…。
そしてふと気付く…。
オレは、一旦戻れば水着があるが…コイツのは?
てか…プール知らなねぇと言う事は、水着持ってるのか?
チラリと名前を見る。
『ん?』
仕方ねえ…途中で買うか…。
雲雀の屋敷に行って確認するのは、ぜってぇ嫌だしな。
「一旦、オレんとこ戻ってから行くからな」
『うん』
嬉しそうに歩き出す獄寺に引っ付いて来る名前。
「おま…」
邪魔と言いたかったが、なんだか言えず言葉を飲み込み、なんだか顔が綻ぶ。
はっ!!オレ何名前に引っ付かれて喜んでんだ???
オッ、オレ…ヤベェ?ぐわーぁぁ!!!!んな訳あるかぁぁ〜っ!!!!!!!
獄寺の心の叫びが聞こえる筈もなく。
楽しそうな名前と、名前の頭の上でまたもや、冷ややかにじ〜っと獄寺を見つめるヒバードであった。
さープールへ行きましょう♪。
20090829
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