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(一万打記念)花火*3(雲雀編)

時計の針は、5時半を過ぎたばかり。
なのに何故ここに座っていなければならないのかと、憮然とした態度でパイプ椅子に腰掛けている雲雀。
その現況は、自分の膝に顎を乗せながら浮かれている名前。

花火大会が待ちきれず、まだかまだかと雲雀を急かし、時間があると言い聞かせたが、興奮しながら早く行くんだと駄々をこねられ仕方なく会場へと出向羽目になってしまった。

関係者のブースへ雲雀が不機嫌な顔をしながら現れると、スタッフ達は慌てながらも雲雀を関係者席に案内し、お茶やら、お菓子やら取り合えずここで出来るもてなしをしようと頑張ったが…。

「群れないでくれる?」

雲雀の一声で、スタッフ達はバラバラ散りお茶とお菓子だけが残された。

まったく…最悪。

『ねーねー。はなび、どんくらい?』

「ハナビ ハナビ」

名前の頭の上に乗るヒバードも名前の真似なのか花火と繰り返す。

名前の上がったテンションは下がる事が無いようで、雲雀の足に纏わりつきまがらジタバタ意味のない動きをし、早く時間にならないかと何度も同じ事を繰り返す。

「あと、1時間以上はあるから」

『う〜』

「ヒバードと遊んでたら?」

『うん』

雲雀から離れ、ヒバードと追いかけっこを始め、キャーキャーと叫びながら走る足音が聞こえる。
雲雀は瞼を閉じ、花火が始まるまで寝るつもりのようだ。


花火大会ともなれば、人手がいくらあっても足りない。毎年バイトが起用され雑用をこなす。

そんなバイトの一人が、関係者席に座る雲雀に目を留める。

なっ!なにあの人!めちゃめちゃ格好いいんですけどっ!

近くをワタワタ通過するスタッフを捕まえる。

「あっあの!あそこの人どなたですかっ」

ん?と、バイトが指差す先を見る。

「ああ、雲雀さんだよ」

「雲雀さん…」

「あの人は、多額の協賛金を毎年提供してくれているんだ。いつもは来ないんだけどね…」

「そうなんですかなぁ…」

格好良くて、お金持ち…好み過ぎます!
それに、いつも来ないのに現れるなんて〜
運命かも!

などと、勝手に運命を感じている。

「私、飲み物お出しして来ます!」

「あっ、止めた方が…」

制止するスタッフの声は届かずウキウキと、関係者用に用意された缶ビール片手に雲雀に近付いて行く。

雲雀は気配を感じ、閉じていた目をふっと開き近付いて来た人物に視線を向ける。

ドキッ!
近くで見るとさらに素敵!

「あっ、あの」

「……なに?」

寝ていたのを邪魔され不機嫌な声で返事を返す。
そんな雲雀に対し、顔を赤らめならがら目一杯自分の中で可愛いであろう笑顔を送る。

「お飲み物如何ですかっ?」

冷えた缶ビールを差し出す。
そんな用で起こしたの?と言いたげに見つめ、差し出された物を取るわけでもない。
言うなれば無視。
しかし、恋するバイトはめげずに可愛く務めようと必死にアピールする。

「雲雀さんは、花火大会のスポンサーさんなんですよね〜さっき、スタッフの人に聞いたんですよぅ。それで〜」

無視にめげず、なんとか雲雀の気を引こうとしている姿は傍目から見ると少々哀れにも思える。
そんな雑音に耳を傾けず、退屈そうに「ふぁ〜」と欠伸をする雲雀。



そして雲雀から離れ、名前はヒバードと追いかけっこを頑張っていた。

「ヒバードがおにだとすぐつかまっちゃうし、わたしがおにだとヒバードつかまらないのずるいよぉ」

パタパタと飛ぶヒバードに、懸命に抗議する。

「オニ オニ ツカマラナイ」
名前の頭にポフッと乗るヒバード。両手をのばし、捕まえる。

「つかまえたぁ」

どう見てもヒバードがわざと捕まりに行っているのだが…それでも嬉しくてはしゃいぐ。
そんな中スタッフにぶつかってしまい、ぺたんと尻餅をつく。

「あ〜っ、ごめん。大丈夫?」

びっくりしただけで特に怪我はない。
キョトンとした顔をしながら立ち上がり、立ち上がってお尻をパンパン叩く。

『だいじょぶぅ』

「良かった。ごめんね、もうすぐ花火があがるからバタバタしてるんだ。遊ぶなら違う所で遊んでくれるかな?」

忙しい中、小さい名前がチョロチョロすれば、どうしても邪魔になる。
口調は、優しいが言うなればお前邪魔という感じが漂っていつのが感じられる。

『……』

スタッフに『ごめんなさい』と謝りながらペコリと頭を下げる。
それを見ていた他のスタッフが慌てて近付いて

「おい。この子雲雀さんの連れだぜ」

「えっマジ?」

「注意なんかしたの知られたら…」

アワアワと顔を青くスタッフ。
名前は、もう一度頭を下げるとパタパタ走って行ってしまった。

「オレヤバくねぇ?」

雲雀に知れたら…咬み殺される?おののくスタッフを残し、パタパタと雲雀の所に戻る。

「オコラレタ オコラレタ」

頭の上で繰り返すヒバードに、指を口にあて、シィーとジェスチャーをする。

「ないしょだよぉ」

「ナイショ ナイショ」

どうやらスタッフの心配は不要になりそうだった。


機嫌よく雲雀の元に戻ろうとする名前であったが、見ると雲雀の近くに女の人がいた。

ん?だれ?

雲雀が、女の人といるのを見たことが無かった名前は、離れた所で不思議に様子を見ている。
なんだか、女の人はとても楽しそうに見える。

『……』

「ヒバリ ヒバリ」

『ヒバードだめぇ!きこえちゃうからぁ』

名前は、コソコソ隠れる。

『なかよし?』

雲雀と女の人が一緒なのを見たら、何故か分からないが楽しかった気持ちが萎んでしまった。

なかよしは、いいことなんだもん

そう思っているのに…なんだかもやもやして、嫌な気持ちになっている自分がいる。

なんでかな?
きょうやくんのとこいったらわかるかな?
でも…

チラリと二人を見て、物陰に拗ねたようにしゃがみ込んだ。



雲雀の側でニコニコ愛想を振りまくバイト。

「あのっ。これっ」

コソコソと小さいメモを雲雀に手渡し、ハニカんだ仕草をする。

よっしゃ!この攻撃で落ちなかった男は居ないんだからっ。

心の中でガッツポーズ。

「ねぇ」

雲雀が視線を送る。

「はい!」

ほらっ♪きっと、お返しに自分の教えてくれるんだ!

「ジュースある?」

「は?」

予想に反した雲雀言葉に、意外な顔をしながらも体制を立て直すように笑い掛ける。

「あのっ。携帯の番号とか…教えてもらえませんか?」

相手から来ないのであれば、自分からねだるしかない。

「……携帯ないから。それより、ジュースはあるの?」

冷たい雲雀に不満気ながらも、飲み物を取りに行く。

やっと静かになったと、一息付くと懐をに入れていた携帯を取り出し電話を掛ける。

「哲かい?すぐ手配して……そう。頼んだから」

携帯を切り、ジュースを持って来たバイトに気づき、立ち上がるとそれを受け取る。

「持ってるんじゃないですか…」

不満顔で雲雀に抗議する。
抗議の声をを冷ややかな目で見つめ、興味がないように横をすり抜ける。

「君に教えるのは持ってないよ。バイトならちゃんと働きなよ」

ムッとするバイトを残し、スタスタ歩き、丸くなっている名前に近づく。

「ねぇ。さっきからそこで何してんの?」

『う?』

雲雀の声で、不満顔のまま見上げる名前。
自分的には、隠れていたようだが…雲雀から丸見えだったようだ。

「飲む?」

ジュースを名前に見せると、ホケッとした顔を一瞬したが、頭を横に振る。
何故か機嫌の悪い名前を不思議に見る雲雀。

「何かあったの?」

『……なんもない」

「……」

名前の頭の上のヒバードが、パタパタと雲雀の頭にポフリと移動する。

「ナカヨシ ナカヨシ ヒバリ ナカヨシ」

それを聞いた名前が、アワアワと手を振り立ち上がって、届くはずがないが雲雀の頭の上のヒバードに向けて背伸びをしながらぴょんぴょん跳ねて阻止しようとしている。

『ヒバードぉ〜っ。なっなんもないよ!ないィ!!』

「仲良し?」

『う…』

罰が悪いように俯いてモジモジする名前。

『きょうやくん…おともだちなかよし…だから、じゅーすいんないの』

口を尖らせブツブツ言う名前。

どうやら、そのジュースがあの女の人が持って来たものだというのが気に食わないようだ。
不満の原因に気付いた雲雀は、口元を上げクスリと笑う。

「ねえ、それ…ヤキモチ?」

『ほえ??おもちィ??』

「ヤキモチ ヤキモチ」

『おもちちがう!おもちないよ?』

「食べる餅じゃないんだけど…。まぁいいか」

名前をフワリと抱きかかえ、嬉しそうにクスクス笑う雲雀。

「可愛い」

名前に顔を近づけると、耳元で囁く。

『ほえ?おもちが?』

きょとんと雲雀の顔を見つめる。

「そうだよ」

名前のモチモチの頬を摘んで意地悪く伸ばす。

「ね、お餅みたいじゃない」

『う゛?
 おもちちがうよぉ』

名前の抗議は通らず、雲雀は機嫌良く微笑み名前を抱えながらスタスタと歩き出し、関係者ブースを離れる。

『あれ?はなびは?はなびィ』

バタバタと手を振る。

「群れ過ぎだから他に行く」

『ほぇ…』

「ヤキモチ ヤキモチ」

気に入ったのか、まだその繰り返しているヒバード。

『もちじゃないの〜っ!』

20090815


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