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Lunch time5

庭園での賑わいに反して、屋敷の中には静寂が広がる。
そんな屋敷の一室に、執務を黙々と行う人物のサラサラとペンを滑らす音だけが存在している。

ふ〜っ

集中が切れたのか一つ溜め息を付くと、右肩に左手を添えつつ首を左右に傾け疲れを緩和させる仕草。
ふと時計に視線を送れば、時計の針は既に12時を過ぎ、長い針が6の文字に近づきそうだ。

あ…ヤベぇ。
十代目が言っていた昼食会始まってるなぁ…。

机に散らばる書類を纏め、両腕を天井にぐっと伸ばし椅子に体を預けつつ反らし伸びをする。

顔出しくれぇしないと…。腹も減ったし行くか。



「よう!獄寺!迎えに来たぜ」

背後からの声に、獄寺が振り向くと、ドアに寄りかかりつつ笑う山本が居る。

「んだぁ?迎えなんて頼んでねぇ」

間の抜けた軽い山本を、睨む獄寺。

「親切で来てやったんだぜ。それもお供付きでな」

「あぁ?何言ってんだ?これから行くとこだったんだよ。それに、供ってなんだよ?」

山本をよく見ると、肩にヒバードが乗っている。

「雲雀んとこの鳥じゃねぇか。お供ってそいつがか?別にんな鳥のお供なんて、オレは嬉しくなんかねぇ」
アホかお前と言う仕草をしながら、椅子から立ち上がろうとする。

『ね〜ね〜つくえのぉそれなにぃ』

「……?」

この屋敷の中では聞き慣れない、幼い子供の高い声に、椅子から立ち上がる中腰状態で声の方角に視線を向けると、獄寺が作業していた机に背伸びをしながら、気になる物体に『う〜っ』と、懸命に手を伸ばしている名前。

不安定な姿勢で、名前に驚いて思わず体制を崩しそうになるものの、椅子に手を付いてなんとか体制を立て直した。

「なっ、なっ、なんでお前がいんだ?」

獄寺の驚いた声に、机でジタバタしていた名前は動きを止め、何が?と顔を向ける。

慌てる獄寺に、笑いを堪えるように、山本は片手を口元に当て見ている。

『あんね〜っ。たけしくんと、むかえきたのぉ』

「いや、オレが聞いてんのはそうじゃねぇ。なんでお前がここにいるんだって」

『う?むかえきたのぉ〜!!!!あのね、ぷりんだよ』

プリン?何言ってやがるんだ?名前と全く噛み合わない。
この状況を教えろと、ドアの前でニヤつく忌々しい山本を、ジロリと睨みつける。

「あははは。やっぱ驚いたな」

呑気な山本の笑いにに、更にイライラが増す。

「やっぱ驚いたな。じゃねぇ!そりゃぁ普通驚くだろ」

「ん〜かも?」

「ちっ。イラつくぜ。で、なんでこのチビがいんだよ」

獄寺は、机でジタバタしている名前の旋毛をグリグリ押している。

『う〜っ。チビないよぉ〜っ!!名前だよぉっ!それにぃ〜グリグリいたぁいぃぃ〜!!!!』

頭を抑えながら抗議の声を上げ、獄寺に向けふくれっ面をしている。

「ツナから聞いてないのか?」

「十代目から?」

名前を構うのを辞め、なんの事だとツナとの会話を思い返す。

「ああ…そういやぁ、スペシャルゲストが来るって…おっしゃってたなぁ…」

獄寺のセリフに、頷く山本。

「それそれ」

「で、スペシャルゲストって、お前!?」

名前をマジマジ見つめる。
獄寺の視線を受けつつ、先程グリグリされていた頭を押さえつつ、何が?と不思議そうな顔を返す。

「お前…十代目と知り合いなのか?」

『じゅうだいめて、なに??』

「十代目と言えば、十代目だ!」

「ん〜。じゅうだいめ…」

聞きなれない言葉に、悩む名前と、獄寺の間にヒバードがパタパタと近づき、名前の頭にポフリと乗る。

『ヒバードぉ〜じゅうだいめてぇなに?』

名前の質問に小さく首を傾けるヒバードと共に、一緒に『うーん。うーん』と唸りながら首を傾げている。
名前とヒバードの仕草が妙に可愛い。
それを見て笑う山本。

「あのな、名前。十代目てのはな、ツナの事だぜ」

『ツナさん?じゅうだいめぇ?』

復唱に、頷く。

ツナの名前が何故…十代目になるのか分からないものの、そっかぁと頷き納得している。
そんな名前の頭上に居るヒバードを見つめ、名前に問いかける獄寺。

「お前…雲雀とも知り合いなのか?」

『ん?』

「雲雀の鳥に妙に…懐かれてるじゃねぇか」
「名前をカタカナで 名前をカタカナで」

『んとね、ヒバードとなかよしなのぉ〜。ね〜ぇ、ヒバードぉ』

頭の上に両手をのばしヒバードを捕まえると、嬉しそえにヒバードに頬擦りする。

「ナカヨシ ナカヨシ 名前をカタカナで スキ スキ」

通常…小鳥と女の子が戯れる図というのは、可愛い筈ではあるものの…その鳥が、気に食わない雲雀のヒバードであるためか、獄寺はイマイチ不機嫌そうな表情を浮かべている。

「ねーねーぇ」

ヒバードと戯れていたが、不意に獄寺に声を掛ける名前。

『あれ、あれなに??』

名前の指は、机の上を指差している。

「あ?机に何かあんのかよ?」

眉を潜め、机を見る獄寺。
特に変わった物は見当たらない。

『それぇ、それ、なに?』

名前が指していたのは、机に置かれた小さな匣。

「あ?これか?」

机の上からヒョイと手に取り、名前に向ける。
その匣に触りたいようで、獄寺の手元に背伸びをしながら手を伸ばす。

「……」

ひょい。
匣を持つ手を上に上げる。
背伸びをして伸ばしていた名前の手が、空振りしてよろけ獄寺にぶつかる。

『ったぁ〜!!ずるいィ〜ッ』

イ〜っと顰めっ面を向ける名前。
それが面白く、ニヤニヤ笑う獄寺。

「ズルくねぇだろ。誰も触らせるなんて言ってねぇし」

『う゛〜っ。はやといじわる』

不満顔をして、山本に助けを求める名前。

「獄寺…ガキじゃないんだから、名前に貸してやれって。名前が触ったって、別にどうなるもんでもねぇだろ」

山本の足にくっ付きながら『そうだ!そうだ!』と賛同する名前。

「ったく…ほら」

手に持つ匣を名前に渡す。
大人の手には、片手で軽く持てる匣だが、名前の小さな手には、大きい匣に見える。
匣を興味深々な顔で触りながら、匣に開いている穴を覗いてみたり、指を突っ込んだりしている。
そんな名前を余所に、獄寺はヒソヒソと山本に問いかける。

「で、コイツは…十代目のなんなんだ?」

「ん?」

獄寺の真意が今一つ掴めない山本。

「何って…何がだ?」

「どんな関係なんだつうんだよ」

「さぁ…知らねぇ」

暖簾に腕押し。山本から、納得する回答が得られずイラつく獄寺。
イラつかれても山本には、ツナと名前の関係と言われても大した関係がある訳でもなく…あるとすれば、雲雀な訳で…肩をすくめるしかない。

『ね〜ね〜。こんなかなんもない?』

匣の穴に、人差し指と中指をズボッと突っ込みつつ獄寺に匣を突き出す。

「だ〜っ!!何してんだ。この穴は指を突っ込むもんじゃねぇ!」

匣を取り上げられ机の上に戻される。

『う゛〜っ。けち、けちぃ』

「ケチ ケチ」

名前と共に、ヒバードも名前のマネをして同じ言葉を連呼する。

「なっ、なんちゅう鳥だ!雲雀に態似て度悪ィなぁ」

『ヒバードいいこだよぉ!きょうくんもわるくないー!』

抗議する名前。

「あ゛??別に、お前んとこの…きょうや…あれ?…きょうやって…」

獄寺の頭の中で、何やら頭の中がグルグルと回る。

きょうや?
雲雀?
雲雀恭弥?
……ん?

「あ゛?」

呆けた獄寺に山本が頷く。

「だぜっ」

「なにぃ!!!!!!」

驚愕の獄寺をキョトンとして見る名前。

『ん?』

「もしかしてお前!!雲雀の子かっ!!」

驚き過ぎて、思わずヨロケる。

『ん?』

獄寺の慌て振りに、あははは…と乾いた笑いの山本。

「そりゃぁねえだろ」

「ち、違うのか?」

「あ〜ん〜。雲雀の子じゃねぇだろ。似てねぇし」

多分…と、曖昧な山本ではあるが、やはり、名前が雲雀の子と言う設定は、山本的にも納得したくないようだ。
それは獄寺も同じで、二人は同じポーズで「だよなぁ…」と呟きつつ頷いている。

奇妙なリアクションの二人を見つめる名前は、山本のズボンを引っ張る。

「ん?どうかしたか?」

名前に、視線を落とす山本。

『ぷりん…』

「あっ。ああ、そうだった」

急に、ぷりんという二人の会話について行けない獄寺は、何だよそれ?と本を見る。
名前が元気に跳ねながら獄寺に近づくき、腕を引っ張っぱってニコニコしている。

『あんね、ぷりんがあんのぉ!!たべいこー!はるちゃんとぉきょこちゃんが、でざーとぉぷりんていてたんだよぉ』

名前の瞳がキラキラしている。

「んな訳で、迎えに来たんだった」

当初の目的に、やっと軌道修正。

「んだそれ?まぁ、名前の事は…十代目にお聞きしよう」

「だな、名前。行くぜ」

名前に手を差し出す山本。
元気に頷き名前の小さな手が、山本の大きい手を嬉しそうに掴む。

やっぱ可愛いなぁ…。

名前の手を握り返す。

山本と手を繋いで笑い、もう一つの空いている自分の手をぶらぶらさせながら、少し離れた獄寺を見る。

その視線に気づいた獄寺は、何だよ?と視線を送り、歩みの速度を落とし名前の横に並ぶと、名前は獄寺に向かって手を伸ばす。

「ちっ。仕方ねえなぁ」

伸ばした名前の手を渋々と言う顔を作って握る獄寺ではあるが、その繋ぐ手は、態度とは違い優しい。

『えへへ〜』

右に山本。左に獄寺。
二人と手を繋いで楽しげな足取り。
両側の二人が、名前の腕をヒョイと持ち上げ、一瞬体がフワリと浮かぶ。

『おお〜っ!!』

思わず声を上げ、キャーキャーと喜んではしゃぐ名前。

「オイオイ。女の子が、おぉ〜って雄叫びはねぇだろ」

『お?』

獄寺の顔をきょとんと見る名前。

「いいんじゃね?可愛いと思うけどなぁ」

『えへへ〜』

山本の言葉に照れる名前。

「えへへ〜っじゃねぇからな。たく…可愛い格好してんだから…」

ぼそりと呟く言葉に、意外そうなな顔で獄寺を見る山本。

「んだよ」

若干顔が赤いのは、突っ込まずにいようと思う山本。

「なんでもないぜっ」

でも、ついニヤニヤしながら獄寺を見てしまう。

「気持ち悪ィ」

『ね〜ね〜。ぷりんたのしみだね〜っ』

足取り軽い名前。

「お前は、それしかねぇのかぁ?」

獄寺は、からかい名前の体を小突く。
それをキャッキャッと喜ぶ名前。

『ヒバードもぷりんたべようね〜』

名前の頭の上で、丸くなっているヒバード。

「タベル タベル 名前をカタカナでトタベル」


名前の両手に繋がる山本、獄寺の二人が不思議な図に見えなくもないが…。
それでも、ほのぼのとするそんな昼下がり。



2009.8.25
* ATOGAKI ******
ふー獄寺…やっと…やっと登場なのに……
なんですかこれ。
ぐわーーっ!!!!反省っす!!!!引っ張ってこんなヘタレ話かぁ
ひーん(ToT)文才不足に反省するばかりでございます。

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あきゅろす。
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