[携帯モード] [URL送信]
ありがとうの日

『んとー えっとーぉ』

画用紙に真剣な面持ちで、クレヨン片手に何やら描いている名前。

「名前ちゃんどうですかぁ?出来ましたか?」

ニコニコとその姿を見守るハルは、名前の背後から画用紙を覗き込もうとした。

『あーっ。ハルちゃん!みちゃだめぇ』

画用紙を自分の体で見えないように隠して、プーッと頬を膨らませながらハルを見つめる。

「はひっ?見せてもらえないんですか?」

『まだだめなのぉーあとでだよ』

「分かりました。では、出来たら見せてくださいね」

『うん』

名前ちゃんが終わるまで暇です。そうだ!ハルも…何か描きますかぁ。名前の横で、ハルも余っている画用紙にクレヨンで何やら描き始めた。

無言の空間。
真剣な二人。

二人に、お菓子を…と思いやって来た草壁であったが…妙に真剣な姿に声を掛けるのが躊躇われ、入り口に置いたまま部屋を後にした。

一体…何をしていたんだろうか?

『できたぁー』

描きあがった画用紙を両手で高く持ち上げ満足げに眺めている。

「出来ました?見せてくださいね!どれどれ〜??」

画用紙を覗く。

「これは…とても…シュールですね」

『しゅうる???』

「あーっと、素敵です。ですけど…説明を求めてもいいですか?」

なんと言うか、実は画用紙に描かれたものを見ても…何か分からなくて、思い切って聞いてみる。

『いいよぉ。んとねぇ……』




6月21日(日)

和室で着流し姿の雲雀は、本を読みながら寛いでいる。
襖から、名前は顔をチラチラと覗かせ、雲雀の様子を窺っている。
既に気が付いている雲雀だが、その動きが面白くそのまま放置をしていたが、さすがにこのままなのもと思い、本を閉じ目線を名前に向け、手招きをする。
雲雀に気が付いてもらえたと、嬉しそうな顔でパタパタ走り寄る。

「どうしたの?」

いつもは、お構い無しに近づいて来て雲雀の周りで転がったり、膝の上に乗ったりする名前だが、今日はその行動をせず雲雀に近づいたまま、後ろに何やら持った姿勢でモジモジとしている。

『あのね、これあげる!』

背中に隠していたものを雲雀に手渡す。
それは、クルクルと丸めて筒状になった画用紙で、赤いリボンで止まっている。
中に何か描いてあるようだ。

「僕に?」

『うん』

嬉しそうなワクワク顔で、雲雀を見つめている。
雲雀は、リボンを取り画用紙を広げる。

「ワオ……これ… (何??)」

最後の台詞は、声に出さず飲み込んだ。
画用紙には、クレヨンで大胆に描かれ過ぎた何かが広がっている。説明が無ければ批評するのも難しい。

「……」

名前は、マジマジ画用紙の絵を眺めている雲雀に、我慢できずに説明し始めた。

『あのね、あのね、きょうやくんなの』

「僕?」

『うん!ぷれぜんと』

「?」

『6がつの3つめはありがとうってひって、ハルちゃんがおしえてくれた』

「ありがとうの日?3つめ?」

雲雀は、少し考える。6月の第三日曜日は父の日だと思い出す。
それの事?でも、父親じゃなんだけど…三浦ハルは何て説明したんだろう?
嬉しそうに雲雀を見る名前の頭をそっとなでる。

『えへへへ』

名前は、雲雀の膝の上ににちょこんと座り、楽しげに絵の説明を更に続けようと下から雲雀の顔を覗き込むと、雲雀にギュッと抱き締められた。

「うわ?ううう…くるし…」

ジタバタとする名前に、クスリと笑いながら耳元にそっと顔を近づけると、囁くように。

「ありがとう。大切にするよ」

お礼を言い、名前の柔らかい髪にキスを落としながら、頬にもキスをする。

名前はキャーキャーとはしゃぎ声を上ながら足をバタバタさせ、ほんのり赤くさせた頬で雲雀を見上げると、内緒話をするように小さな手で自分の口元を隠しながら、雲雀の耳に近づき、コショコショと囁いた。

『あのね、きょうやくん。だいすき』

「ワォ。そんなの知ってるよ」

『おお?』

「僕も、名前が好きだよ」

『ほんとぉ』



父…ではなく、ありがとうの日は、
甘すぎるほどに…イチャイチャと過ぎて行くのでした。


後日、和室の「唯我独尊」の額の横に、名前の描いた雲雀の絵が飾られた。




******おまけ*********
「ツナさん。これあげます」
「何?これ」
「先日、名前ちゃんとお絵描きしたんですけど。私は、ツナさんを描いてみました☆どうですか?素敵に描けたと思うんですけど」
「……これ、オレにどうしろと?」
「はひ?うーん。どうしましょう?」
ハルの描いたツナは…飾られたかどうかは、謎のまま…。




2009.6.21

.* ATOGAKI *******
急に書いたので…番外編としてUPです。
本日、父の日なので書いてみました。
雲雀さんは、お父さんじゃないので…父の日ではなく、ありがとうの日と変改です!
今の話の中に急には入れそうもないんで番外編。
なので、本編とは別のイメージで読んでもらえたらいいかと。相変わらずイチャコラしてますけど…いつも以上に、雲雀さんがー!!!!
愛の告白してますから!オイオイ!!
本編では、今の所言ってませんから(≧д≦)

それと、ハルのツナは…どんな風に描かれていたのやら…そこも気になります。

[次へ#]

1/45ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!