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じゃんけん。

『じゃぁーんけーん、ぽぉぉぉん!!』

掛け声と伴に、名前は元気に手を開いて前に出す。

『ぱぁぁだよおおお!!』

その宣言に、名前の目の前に居る着流し姿で寛いで座る雲雀の手を見れば、人差し指と中指を伸ばしチョキを出していた。

『ふえぇぇぇ。まけぇちたぁ…』

唇を尖らせ、残念そうな声を漏らす名前。
先程から何度もジャンケンを繰り返している二人。
でも、そのジャンケンの後に何があると言う訳でもなく…ただジャンケンをしているだけなのだが、名前はその繰り返しの遊びを楽しんでいる。

うーん。うーん。

小さく唸りながら次は何を出そうかと悩む名前が可愛くて、穏やかな表情で見つめる雲雀。

『こんどわぁ、わたしがぁ、かつよぉぉ』

「そう?」

『うーっ。かつもんんん』

何回も繰り返しているジャンケンなのだが、現在の勝負は全て雲雀の勝ち。
どうしても勝てない名前。
勝負事となると名前相手でも、雲雀は本能的に勝ちを譲らない様だ。

「ねぇ、次からジャンケン勝負に何か付けよう」
『ふえ?』

雲雀の言っている意味が良く分からず、名前はキョトンとした顔を向ける。

「ジャンケンに勝ったら、相手に何か出来る勝負」

『うとぉー。したらね、かったらねぇ、まけちゃったひとおぉ、よしよしってなでてあげんのわぁ?』

「ん?」

『だてねぇ、まけっとぉ、まけちゃったぁぁてなんでしょ?だからぁ、かったひとがぁ、よしよしってしてあげんのぉ』

「……」

名前は凄く名案だと得意顔。

「……いいよ」

『うん。じゃぁぁぁぁ!じゃーんけーん』

「ねぇ、次、何出すの?」

突然の雲雀の言葉に、名前のジャンケンの掛け声が途中で止まる。

『とぉ?』

「名前は、次に何を出すの?」

ジャンケンをする前に、何を出すなんて言える分けがない。
それじゃぁ勝負にならないのに、雲雀は何故そんな事を言い出すのか分からない。

「秘密なの?」

『えーっ』

雲雀が少し寂しそうな顔をすれば、名前は慌ててしまう。
内緒に出来ず…。
『とねぇー。ぱぁーだすぅ』

「そう」

ニッコリと名前に微笑み返す。

『うん』

「じゃぁ、始めようか」

なんだか不思議なジャンケンになっている気もするが…ジャンケン、ポンと名前が言えば、宣言した通り、名前はパーを出し、雲雀の出した手を見れば、グーを出していた。

『ほえ???』

「名前の勝ち」

『とぉ…えとぉ…』

自分がパーを出すと言ったのに、勝っている状態に首を捻る。

「名前の勝ちでしょ?」

『うん。かちぃ!』

不思議な勝利。
名前の勝利宣言を聞いた雲雀は、ニッコリと微笑みながら顔を傾ける。

『ほえ?』

「どうしたの?勝った人は、負けた人の頭を撫でてあげるんじゃなかったっけ?」

『あーっ!!そだったぁ』

二人が向き合った形で座っているいるものの、雲雀の頭を撫でるには名前の手は届かず、立ち上がって雲雀の横に行くと、小さな手で雲雀のサラサラとして触り心地の良い髪に触れ、よしよしと撫で、また元の位置に戻って雲雀の前にちょこんと座る。

『とーぉ。じゃぁージャンケンもっかいねぇ』

「いいよ」

次の勝負に備える名前に雲雀がにまた同じ質問する。

「次は、何を出すの?」

『ほ、ほ、ほえぇぇ???』

ジャンケンの前に雲雀は必ず質問を繰り返し、それに答える名前。
その度に名前はジャンケンに勝って、負けた雲雀の頭を撫でる。
その繰り返し。

ジャンケンと言うよりも、今はただ名前が雲雀の頭を撫でるを繰り返す遊びに変わってしまっていて、ジャンケンはただのオマケ。
それでも、その繰り返しがなんだか楽しくなって来た名前は、キャッキャと嬉しそうにはしゃいで繰り返す。


ジャンケン勝負に勝つよりも、負けた方…雲雀が特をする勝負。
可愛い名前が、頭を撫でてくれるのだから。

勝負事はなんでも勝ちたい雲雀だが…


この勝負は名前に譲ってあげる。



『よし、よし』


名前の撫でる手が気持ちいい。


2013/5/20


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あきゅろす。
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