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「好き?」「好き」「愛してる?」

『ゆぅーきぃ、こんこんんんーゆぅーきぃぃぃ。うわぁぁぁ』

並盛に何度目かの雪が降る。
今年の雪は、降っても積もる事まで行かなかった雪だったが、今回のはいつもと違っていた。
深夜から振り始めた雪は止む事は無く、朝には街並みを銀世界へと変えていた。
そして、積もった雪に名前が興奮しない筈がない。
なんとなく目が覚めた名前は、雲雀と共に眠る布団から抜け出し、外を眺め雪景色に目を丸くする。

『まっしろよぉぉぉ。すごーぉ』

声を上げれば、吐き出される息が白く広がる。
寝間着のままの名前だが、興奮し過ぎているのか本人はあまり寒さを感じていないよう。
見慣れた筈の庭が、真っ白に埋め尽くされている事に驚き目を輝かせている。

「寒い…」

布団から…と言うか、雲雀の腕からすり抜けて起き出した名前の後を追いかけて来た雲雀が、ポツリと呟く。

『あー。きょうやくん、おはよぉー。みえぇ、まっしろよぉ。すごーねぇ』

目をキラキラと輝かせながら雲雀を見詰める名前の小さな体を、雲雀は軽々と抱き上げ抱き締める。

「雪だからね。それより、薄着で…寒くないの?体が冷え切ってるよ」

冷たくなった名前体を暖めるように、羽織ってきた羽織りの中に名前の小さな体を包んで、冷たくなった赤い柔らかな名前の頬に自分の頬を付ける。

『あったかぁぁねぇ』

雲雀の体温と、頬の暖かさに、身を寄せながら名前は頬を更に摺り寄せ甘える。

「全く…興奮し過ぎて風邪を引くなんて事しないでよ?」

『うん。へーきぃ』

名前の平気はあまり信用出来ないが、気を付けなよと付け加えれば、また嬉しそうに笑う。

「…分かればいいよ」

素直に雲雀の言葉に頷く名前のオデコに、軽くチュッとキス。

「でもまだ朝早いから寝よう」

『ゆきあそびたいよぉ』
「もう少ししたらね」

『う〜』

不満の声を漏らす名前を抱え布団に戻ると、二度寝を決め込む。
雲雀の腕の中で暫くもぞもぞとしていた名前だったが、雲雀に優しく髪を撫でられている内に、気持ち良くなって来て、いつの間にか規則正しい寝息を立て始める。

雲雀は自分の胸にすがりつくように眠る名前の前髪を横に流すと、オデコに唇を寄せ囁く。

「名前は僕の事好き?」

眠る名前が問い掛けに答える筈もなく、幸せそうな寝顔を返すだけ。
もともと答えなど求めていない問い掛け。
雲雀の唇が、名前のオデコ、鼻、頬へと流れる様にゆっくり触れて行く。
愛おしくてたまらないと言うように目を細め、名前の耳元でまた囁く。

「好きだよ」

大切な君。
大切な君の温もり。

「名前は、僕を愛してる?」

名前の柔らかい桜色の頬を、雲雀の白くしなやかな指が流れるように何度も撫で、小さな唇の輪郭をなぞると、名前は寝ぼけているのか口を小さく開いて舌を出して雲雀の指をペロリと舐めた。

「……」

舐められるとは思わなかった雲雀は、一瞬動きを止めたが、微笑ながら名前が舐めた自分の指をペロリと舐め返す。

「可愛い」

食べてしまいたい程可愛い。

名前の後頭部に手添え、頭を少し持ち上げながら、雲雀も名前へと顔を近付けて行く。

ポフ。

「ん?」

「ヒバリ、ヒバリ、名前をカタカナで、名前をカタカナで、オハヨー、オハヨー」

ヒバードが、自分の存在を主張するように、布団の枕元で軽やかに言葉を繰り返し始める。

『ん…』

その声に反応した名前は、声を漏らしながら小さく体を動かすが、雲雀はそれを許さず、抱き締めながら髪を撫で、再び眠りの世界へと導く。

「しっ。名前が起きるよ」

言い聞かせる様に言えば、ヒバードは小首を動かしながら雲雀の言葉を理解したのか静かになって、小さな瞳で雲雀を見詰める。

「名前が起きたら、君は名前と外の雪で遊ぶんだから、今は邪魔しないでくれる?今は、僕と名前の時間だよ」

名前の体を更に引き寄せ、名前の髪に顔を埋める雲雀。

「ヒバリ、名前をカタカナでスキ。スキ。アイシテル。アイシテル」

名前が起きない位の小さな声でヒバードが繰り返す言葉。


好き?

好きだよ

愛してる?

確認しなくても愛してるに決まっている。
君を愛さずになんていられないでしょ?

君は、僕を好きでいてくれる?
愛してくれる?


君の心を強く、狂おしく求めてしまうけれど…

今は、小さな温もりを独り占め出来る幸せで満足するから。
いつか君の、名前の全てを僕に頂戴。


2012/2/6





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あきゅろす。
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