ぞーさん。
『あんね、ぞーさんとこいきたい』
「象?並盛に象なんていないでしょ?」
朝の散歩。
雲雀にとっては見回りになるのだろうか?
雲雀と名前。二人は並盛町をゆったりと歩いていた。
『ぞーさんいるよぉぉ。とねぇ、こぉーんくらいでねぇ。おはながながくてぇ。こんななのぉ』
名前は両腕を大きく広げ、象の物真似なのか?右腕を大きく左右に振りながら、象さんについて主張する。
「象が大きくて、鼻が長いのは知ってるよ。ただこの近くに動物園なんてないと思うけど?」
『ぞーさんね、こっちいんの。こっちぃー』
雲雀の疑問に、名前は得意げな顔をすると、雲雀の手を握り、象がいる場所へと引っ張っていくつもりのようで、ズンズンと進んで行く。
「象って…公園?」
『うん。ぞーさんね、おはなからおみずだすのぉ。すごーいんだよぉぉ』
名前の言う象は生きている象では無く、象の形をした噴水の事だった。
『ほらぁ、あれぇぇ。きょうやくんみてぇ〜ぞーさんだよぉぉ』
はしゃぐ名前の指を指す方角に、水色の小柄な象の姿が見える。
小さな子供達が、遊べるようにと作られたその場所。浅い窪みに水が溜まって泉の様になったっている。水は深い所では、小さな子供の膝より少し下程の深さ。
その水の中央に、名前が言う象の噴水が、朝の太陽の光を受けてキラキラとした水を鼻から吹き出している。
時間もまだ少し早い事もあり、その周りには朝の散歩をする人がちらほらいる程度で、水遊びをする子供達の姿はない。
『ぞーさんすご〜よねぇ』
噴水の象が水を吹き出しているだけなのだが・・・。雲雀は、名前がの凄いと言う意味に迷いながら、無言で象を眺める。
名前の方はと言えば、握りしめていた雲雀の手を離すと、象の噴水に元気よく駆け寄って行く。
水の中にいる象をニコニコと笑って見つめる名前。
大好きな象の噴水の前。水遊びがしたくなるのは名前にとって当然の事。
後から歩いてきた雲雀の顔を、ねだる様に伺って見上げる。
『んと…ね』
「……」
名前の見上げて来る表情から、雲雀は何が言いたいのかがピンと来て、仕方ないと溜め息を漏らしつつクスリと笑う。
「はしゃぎ過ぎなければいいよ」
雲雀の許可に、ぱぁと顔を明るくさせ、ブンっと音がしそうなほど頭を縦に大きく振り頷く。
『やたぁぁ。だいじぶよぉぉ。ちょっとだけだもん』
言葉通りに本当にちょっとだけになればいいけれど…少々不安要素が漂う。
「ほら、ちゃんと靴と靴下を脱ぎなよ」
『はーい!!』
素足になった名前は、そっと足を水に浸ける。
『ふわぁぁ、ちめた…』
足元に水の爽やかな感覚が体中に広がって、その冷たさに少し肩を竦めながら、名前は嬉しそうな顔を雲雀に向ける。
『きょうやくんもぉ。いっしょしよーよぉー』
足元の水を、大きく足踏みさせジャブジャブと飛沫を上げながら、雲雀を誘う。
「そんなに暴れると滑って転ぶよ」
『だいじぶぅー!!おもしろいよぉ〜。きょうやくんもぉぉ!うわぁぁ??』
大丈夫と言った先から足元が滑り、転びそうになるものの…足を踏ん張り体勢を立て直す。
その名前の動きに雲雀の表情が一瞬ピクリと反応するが、名前は元気に『ほらぁ。だいじぶぅ』とガッツポーズ。
『きょーやくーん。はやくぅー』
僕は水遊びするなんて一言も言ってないだけど…。
そう思いながらも名前のお誘いに断るのも…。
雲雀は靴を脱ぎ、小さな泉に足を入れ名前の側へと近付いて行く。
雲雀が側に来てくれた事で、名前のテンションは更に上昇。はしゃいでジャンプを何度か繰り返し、数度目のジャンプでつるりと足を滑らせる。
名前の体を、とっさに雲雀が受け止めようと手を伸ばすものの、勢いが良すぎ名前の動きに、雲雀を一緒に巻き込んで転び、二人はずぶ濡れ。
尻餅を付いたような格好の雲雀の足の間に、名前の小さな体はスッポリはまりながら突っ伏した状態に、ビックリした顔でパチパチと瞬きを繰り返す。
「だから気をつけてって言ったのに」
『えへへ。ころんじったぁ』
呆れた顔の雲雀に、名前は濡れたままだというのに雲雀に甘えるように抱きついて、楽しくて仕方ないという感じいっぱいに笑う。
「はぁ…」
雲雀はこの状態に、もう濡れてしまったのは仕方ないと諦める。
しかし、夏だと言え濡れたままでは良くない。早く帰って濡れた体を乾かさなければと思うのが…。
『きょーやくーん!ぬれちったからぁぁ。ぞーさんといっしょあそぶよぉぉ!わぁぁぁい☆』
名前は元気よく象の噴水に駆け寄って、像の鼻から噴出してくる水に向かってジャンプして、その水をはしゃぎながら受け止め、もう頭から服まで総て濡れ、遊び出す始末。
『きゃーぁぁぁ!!おもしろいよぉー!あははははは』
「濡れたからって…。まったく……遣り過ぎなんだけど」
象が噴出す水がキラキラ光り、はしゃぐ名前も一緒にキラキラと輝き、可愛い笑顔を雲雀に向ける。
『きょーやくんもぉ。ぞーさんとあそぼーぉぉ。おもしろだよぉぉ』
まったく。元気すぎる名前には敵わない。
他人など関係ない雲雀なのだが、名前に関しては特別で、弱いのは何時もの事。
はしゃぐ名前に観念し、雲雀も一緒に象の元へ…。
象の噴水の元で水遊びをするという、雲雀には到底似つかわしくない行為。
名前と一緒に遊ぶその姿を、ボンゴレメンバーが見たら開いた口が塞がらない程の驚きをするかもしれない。
雲雀と遊べる嬉しさで、名前はとても嬉しそう。
「名前と一緒にいると、僕が今まで体験した事のない事ばかりさせられるよね」
名前は雲雀の言葉に小首を傾げた後、ちょっぴりやりすぎちゃったかな?と、反省気味の顔で雲雀を伺う様に見上げる。
『ふえ…ごめんなさい…』
その小さな声に、雲雀は口元少し緩ませながら、名前の濡れた頭をクシャリと撫でる。
「怒ってないよ。名前と一緒だと飽きないって事」
『あきないのぉ??』
「楽しいって事だよ」
『ふわぁぁ。わたしも、きょうやくんとでたのしーよぉぉ。したら、いっしょだねぇぇ』
「そうだね」
仲良くほのぼのと公園で水浴びをする二人。
水浴びを堪能し、二人はずぶ濡れのまま屋敷に戻ると、それを出迎えた草壁は、予想外の展開にバスタオルを手に大慌て。
そんな草壁の慌てように、雲雀と名前はクスクスと笑う。
******
雲雀が公園で水浴びをした日の後…
公園の象の噴水で、カッコイイ青年が現れ水浴びをし、それはそれは見惚れる程の光景だと言う噂が広まり、数日象の噴水周辺が、女の子や近所の奥様方で賑わったとか。
2011/8/21
2011/9/11転記
* ATOGAKI *****
象さんの噴水で戯れる雲雀さんが見てみたいです。
水も滴るいい男ってやつです。
(≧▽≦)キャッ☆
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