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ふかふかする。
太陽が眩しくて、空がとても青いそんな夏の日。
最高気温も例年通りの暑さにげんなりとするが、そんな暑さなど元気パワーで吹き飛ばしてしまう元気っ子な名前。

今日も今日とて、公園で思う存分遊んで帰って来た名前を、いつも通りに草壁が出迎える。

「名前さん。おかえりなさい」

『てつさぁぁぁぁぁん!ただいまぁぁ!!』

なにがそんなに嬉しいのかと思う位の笑顔を振りまきながら、草壁に向かって突進して来る名前。その突進に慣れた手付きで、名前の小さな体を受け止める。
草壁腕の中で『えへへ』と名前は可愛い笑顔を向ける。

そんな他愛ない事だけれど、名前がこの屋敷に訪れるまでは無かったほのぼのとする出来事。
可愛い名前の頭を、草壁の大きな手が優しく撫でると、名前は顔を更に輝かせる。

『てつさん。あんねぇ、こうえんでぇ、すごーおっきいおやま、つくったのよぉ。したらね、ヒバードがぁ、おやまのうえのったの。わたしもいっしょしたくて、まねっこしたらぁ、どかーぁぁ!!てぇ、おやまこわれちた〜。でね、でね…』

今日一日の遊んだ出来事を伝えたくて、辿々しくも言葉を繋げながら、身振り手振りを加えて懸命に話す名前に、思わず笑みが零れる。

「元気に遊んで良かったようですが、帰って来たら?」

『ほ、ほえ。とぉ…うがい、てぇあらう。だよねぇー』

「はい。そうです」

名前の背を押し、共に洗面所へと向かう。
廊下を歩きながら、名前のおしゃべりはずっと止まる事は無く、草壁は、そんな名前を微笑ましく眺めながら、名前の話に相づちをする。

「さ、うがいもして、手も綺麗になりましたね」

洗ったばかりの手をかざす名前。綺麗になった事を確認し頷くと、名前も『きれいなった』と返事をしながら一緒に頷く。

「先程、恭さんから連絡があって、もう少ししたらお戻りになるそうですよ」

名前に、雲雀が戻ってくる事を伝えると、今まで以上に顔を輝かせて嬉しそうに飛び跳ねる。

『ほんとぉぉ。したらぁ、きょうやくんとぉ、あそぶ!!』

雲雀に遊んでもらえると、ぴょんぴょんとはしゃいで跳ね回る名前の姿に、1日外で遊んで疲れていないのか?と思う。一体この元気は何処から来るのだろう?

「1日外で遊んで疲れていないんですか?」

名前に問い掛ければ、きょとんとした顔で草壁を見上げる名前。

『えーっ。だてぇ、きょうやくんとぉあそべたら、すごーくうれしいからぁ。げんきなんだよぉ』

「そうですか」

『うん。あ、てつさんもぉ、いっしょあそぼうよぉ』

みんなで遊んだら楽しいと、草壁のズボンを掴んでおねだりをするものの、草壁は困ったような顔を向け、名前の頭をポンポンと撫でる。

「嬉しいお誘いですが、これからまだ用事がありますので…私はご遠慮します」

『う…。てつさんおしごと…。したら、またつぎあそんで?』

名前の可愛いお願いに頷く草壁であるが、名前と雲雀の中に自分が混ざって遊ぶなどと言う行為はどう考えても困難な事だろう。
名前が良くても、雲雀がどう思うか?
名前のお願いであれば、二人の間に入ったとしてもその場では雲雀は許すかもしれないが…その後、不機嫌、いや悪くすれば咬み殺される?なんて事になるのは、考えずとも明らか。
可愛い名前が、遊ぼうと言うのを毎回断るのは心苦しい事ではあるが、自ら危険を冒すことはしたくない。
名前がここに来てからそう長い年月が経っている訳ではないが、雲雀は随分と変わった。
それ程名前の存在は雲雀にとって大きく、そして草壁にとっても、風紀財団にとっても大切な少女なのだ。
そして、そんな雲雀と名前の邪魔をしては、いけないだろうと思う草壁なのであった。


雲雀が帰って来るのが嬉しくて、はしゃぎながら和室へとぱたぱたと名前は走って行く。

「本当に恭さんが好きなんだな…」

名前の後ろ姿を、微笑ましく草壁は見送った。




『きょうやくんがぁ、かえってきたらぁ、なにしてあそぼうかなぁぁぁ。んとぉ、んとぉ』

はじゃぎながら襖を開け和室へと入ると、部屋の隅にいつもはない布団が畳まれて置かれているのが目にとまる。
名前はその布団に早速興味を示し、ぱたぱたと側へと駆け寄った。

『おふとん??ん…??なんで?』

その布団にそっと触れてみると、ふかふかとしていてとても暖かい。
良い天気で干された布団。取り込んだまま片付けるのを忘れられ放置されていた。

『ふわぁぁ。おふとん、ふかふかだよぉぉー』

布団に思い切り飛び込んでみると、ふわりと名前の体を受け止める。

『きゃぁぁぁー。きもちいいよぉぉ』

布団の上で、ジタバタと元気にはしゃぐ名前。しかし、しばらくするとふかふかの布団の気持ちよさと、今まで外で遊んでいた疲れから次第に動きが鈍くなり、いつの間にかすやすやと寝息を立て眠り始め、夢の世界へと落ちて行った。



「……ワオ」

乱れた布団の上で豪快に眠る名前を、部屋の入口でジッと見詰める雲雀。

「この事態は一体何?」

乱れたこの惨事に溜息を漏らしながら、布団の上で寝ている名前の方へ、ゆっくりと歩み寄る。
遊び疲れて寝ている名前は、雲雀の気配に気付く事無く、すやすやと無防備に幸せそうな寝顔をしている。
雲雀は名前の側に屈み込む。

「間抜けな寝顔だね…」

名前の柔らかい頬を指でそっと触れるが、名前は一向起きる気配は無い。ただ、頬に触れる雲雀の指がくすぐったいのか、自分の手を頬へと運びながらモゾモゾと動くだけ。
雲雀は指で、更に頬をくすぐっていると、やっと夢の世界から意識を戻したのか、名前はゆっくりと目を開け、しょぼしょぼとする目を擦りながら、ぼんやりと雲雀の整った顔を眺める。

『ほえぇぇ。きょうやくんだぁ…う…』

起きたばかりで重い体を布団に預けたまま、鈍い動きで名前は雲雀に向かって小さな手をのばす。

『ふぇ…きょうやくん…うう…』

意識のはっきりしない名前に、雲雀は小さく溜息を付く。

「この布団の惨事について、怒りたい所なんだけど…この状態じゃ意味がないね」

名前の粗相を注意しようと思ったが、寝ぼけた名前に言っても効果がある筈も無い。
呆れ顔の雲雀に、寝ぼけた名前がもぞもぞと近付いて、しゃがんでいた雲雀の足に甘えるように擦り寄る。

『きょうやくんだぁぁーふへへへ』

ニマニマと笑う名前の頭に手をのばし、そっと撫でてやれば、名前は嬉しそうに雲雀の名を繰り返す。

「ねぇ、このまままた寝てしまうの?」

『ん…?んー』

頭を撫でられる気持ちよさで、どうにも寝ぼけたままの名前。
雲雀は名前の体をそっと引き寄せ、顔を近づける。

『ふわぁぁぁ〜』

大きな欠伸をしながら、名前は雲雀の顔を見上げると、可愛く笑いながら嬉しそうに雲雀に抱き付く。

『おかえなさい…。ふわぁぁ…あんねぇ、おふとんがぁ…ふわふわしててね、おひさまみたいなにおいすんのぉ。んでぇ、したらきもちいくてぇ…おひさまのにおいでね、でもね、いまねぇ、きょうやくんのにおい。へへへ…』

子犬の様に、ふんふんと鼻を鳴らして雲雀の匂いを嗅ぐ名前を、愛おしく抱き寄せ膝に乗せる。
『きょうやくんのにおい、だいすきだよぉぉ。すごーく、うれしいにおいすんだよぉ…』

もっと抱きしめて欲しいと言うように、名前は雲雀の胸にくっ付きながら顔を寄せれば、雲雀も甘える名前をもっと堪能しようと、名前の体を抱きしめながら、名前の柔らかい髪にキスを送り、髪に顔を埋める。

「名前の匂いは、お日様みたいだよ。この布団と同じでふかふかする」

『ほえ…おふとん??』

「名前といると心が落ち着くよ。だから…」

『ん?』

「ずっと僕の側にいて、お日様みたいに笑ってなよ」


雲雀の腕に大切に包まれた名前は、安心した幸せそうな寝顔をしながら、再び眠りの世界へと入っていた。

雲雀は優しく微笑むと、名前の耳元にそっと、小さな声で囁く。

( 君は僕の太陽だよ )

その声は、愛しい名前の夢の中まで届いたか分からないが、その寝顔はとても幸せそう。


いつも明るく、僕の側で笑っていて欲しい。
大切な僕の名前。

雲雀にとってとても大切な存在。


そんな大切な名前だが、その事とは別で…次の日、布団をぐしゃぐしゃにした事を、雲雀に怒られる名前が居るのもまた事実。


2011/8/7
2011/9/3転記
* ATOGAKI *****
夏…まったく関係無いですねこれ。
ただ、干した布団がふかふかして気持い良いと言う事が言いたかっただけと言う…。
そうしたら、なんか何時もの通りにイチャイチャしてたと言う…事です。こんなスタートですみません。えへへ。

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あきゅろす。
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