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スラリとした長身
サラサラとした漆黒の髪
色白の肌
切れ長の瞳。

そんなスーツ姿の美麗な青年が、百貨店のキッズフロアーにいると言うシチュエーションがあった場合、人目を引く事この上ない状態ではないだろうか。

実際その通りで、昼下がり…
子供連れの奥様方。
販売員のお姉さま方の熱い視線が彼に集中してしまっているのも仕方ない。

熱い視線を注がれている当の本人は、気にする事もないようだ。無表情のまま近くの子供服の店舗で足をとめ、店内に足を踏み入れる。
店内は、まさにキッズコーナーと言わんばかりのディスプレーが施され、遊び場的なものまでも設置されている。

雲雀的には、無意味に感じるディスプレー達を怪訝な顔で眺めつつ、ぐるりと店内を見渡し、近くにいた若い店員視線を向ける。

「ねぇ」

声を掛けられた若い女性店員は、雲雀に見とれていて急に声を掛けられアタフタしながら顔を赤らめ、思わす声が上擦ってってしまう。

「あっ!!すみません。いらっしゃいませ。」

何故彼女がそんなに慌てているのか見当も付かず、雲雀は怪訝な顔をし他の店員を探そうかと目線を反らす。

「何かお探しですか?」

しかし、仮にも販売員。気持ちを切り替え、営業モードで微笑み掛ける。
とは言え彼女の本心的には、こんな素敵な人の応対を他の子に渡すものかという邪心でいっぱいというのも確かである。

雲雀は作り笑いの店員に視線を戻す。

「この子の、服とか欲しいんだけど」

「は?」

店員は、雲雀ばかりみていて雲雀の斜め下にいる名前に気が付いていなかったようだ。
雲雀の手を握りつつ店員の顔を見つめる名前。

「あっ、はい。こちらのお嬢さんのですね」

ニコニコ笑いながらも何故か、名前に対する視線が痛い気がする。

「(この人の子供かしら?なんか不釣り合いな感じ…。でも、この人カッコいいし〜お知り合いになりたいしぃ〜)」

そんな思いの視線を感じたのか・・・
名前はなんとなく、嫌な気がして店員の視線を避けようと雲雀の影に隠れ、店員を見つめる。
そんな名前の態度を眺める雲雀。

「ねぇ」

不機嫌な声。

「はい」

媚びた声。

「君以外で対応して欲しいんだけど」

「え?」

「他にいないの?いないなら帰る」

「あっ!!ちょっ!!」

急に機嫌の悪くなった雲雀に慌て、少々騒がしい店内になってしまっている取りを奥にいた他の女性店員が気付き近づいて来た。

「お客様?いかがいたしましたか?
何か…失礼な事がありましたでしょうか?」

揉めていた店員を後ろに庇いつつ問い掛け、低姿勢に詫びる。

「・・・・・・。
ああ、君でいいよ」

「は?」

「この子の服をお願いしたいんだけど」

雲雀の影に隠れた女の子に気が付く。
揉めていた店員を奥に下がらせ、名前に視線を落とし、同じ位の目線まで屈み込み優しく微笑みかける。

「いらっしゃいませ。
今日は、どんなお洋服が欲しいのかな?」

名前も彼女に微笑み返し、雲雀の影からピョコっと出てきて店員に近づく。

『んとぉ…』

雲雀に答えを求めるような視線を向ける。
名前の代わりに答える雲雀。

「任せるよ」

「かしこまりました」

「決まったら呼んで」

「では、お嬢様はこちらに。あ、お父様はそちらの椅子でお待ちになりますか?」

雲雀は、店員に勧められた椅子に腰掛けつつ…

「父親じゃないんだけど…」

少し不満顔でボソリと呟きつつ、楽しげに服を選ぶ二人を眺めていた。



しばくして、店員が名前と共に雲雀の元に戻り
名前に似合う服を数十着を見せ

「どちらにされますか?」

と雲雀に問い掛けた。

店員の選んだ服はなかなかセンスが良く、雲雀を満足させるものだった。

「全部。あ…あと靴もね」

「靴ですね。え?あっ、この服…全部ですか?」

まさか全部買うと思いもよらず驚いた声で聞き返した。

「なに?」

「いえ…ありがとうございます」

子供服とはいえ…。これほどの量をアッサリ購入とは…。
感覚がちょっと違うのかしら?
雲雀をチラリと見ると、既にこちらには興味が無いらしく、他の場所を眺めていた。
そして、何か気になったものがあったらしく椅子からスッと立ち上り、近くにあったワンピースを手に取る。
若草色の小さな花が散りばめられた可愛いワンピース。

「これ、サイズはある?」

「あっ、えっと…。たしか、あります。
お嬢さんに似合いそうですね」

少し離れた所にいた名前が、トコトコと雲雀に寄って来て、ワンピースを見つめる。

『かわいいねぇ。あっ!!きょうやくん、それ〜ヒバードがいるよ』

見れば、黄色い小さな鳥の刺繍が胸元にある。

「これも、もらえる?」

雲雀からワンピースを受け取り「かしこまりました」他の服達と共にカウンターに置かれた。

店員は態度には出さなかったが、ふと名前と雲雀の会話に疑問を持ちつつ、雲雀に依頼された名前の靴を選び始めた。

「(父親を…君付けって…変わってるわね…)」



最終的に、選んだ品が多くなってしまい、山積み状態になってしまった。

「あの…よろしければ、お届けしましょうか?」

気を利かせて店員が提案してみると、雲雀は素直にそれを聞き入れ、届けてもらう手続きをした。
ただ、若草色のワンピースだけ名前が特に気に入ったようで、持ち帰りする事となった。

「じゃあ後はよろしくね」

「かしこまりました。本日中にはお届けします」

店員は、丁寧に雲雀にお辞儀をしつつ、雲雀の横にいる名前を手招きする。
名前はきょとんとしつつ近づく。

「今日は、ありがとうございました」

名前に微笑む店員。

『あっ、えっと〜』

自分が買ったわけではないのに…お礼を言われてもと、もじもじする名前。

店員は名前の手にキッズサービスのキャンデーを渡し、小声で

「素敵なお父さんね」

と言い微笑んだ。

『え?おとうさん?』

不思議そうな顔をしながら、雲雀振り返り見つめる。

あら?違うの?という顔の店員に、名前は近づき、内緒の小さな声で

『きょうやくんはね、

おとうさんじゃなくて…


だいすきなひとだよ』


そう照れたようにハニカミながら笑い返した。


「名前。何してるの?買い物は終わりだから帰るよ」

雲雀に声を掛けられ、雲雀の元へ戻り
雲雀の手を握って後ろを振り返ると、店員にバイバイと手を振った。

「なんか変わった二人…」

そう呟きつつも

「またお越し下さい」

と、営業スマイルで二人を見送った。




「ねえ、なに話してたの?」

『え?』

「最後…」

『んとね、あめくれたからありがと、ていったの』

ほらと、繋いでいない方の手を雲雀に向け見せる。

「ふ〜ん」

『2コあるから、1コきょうやくんにあげる!はいっ』


雲雀には、内緒の話。



だいすきなひとのこと。



2009.5.19

.* ATOGAKI *******
雲雀さんって…
買い物とかするんですかねー??
なんか草壁さん任せな気がするなぁ…

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あきゅろす。
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