8月15日*ねこさん*
今日も元気に、ヒバードとお散歩の名前。
足取り軽く、いつもの様に並盛商店街抜けて並盛公園へと足を進める。
「にょ〜ん」
『おぉ!!ねこさんだぁぁ』
公園入り口でゆるゆると尻尾を動かしながら1匹の仔猫が寛いでいる。
道すがらいろんな猫達がいるのを見かけるが、名前は『ねこさんだぁぁ』と喜んで走って近付くけれど、殆んどの猫は名前の行動にビックリして立ち去るか、プイとそっぽを向いてその場からソロリといなくなる。
その日々の仕打ちに少しは学習した名前。離れた場所から発見した猫に、そろりそろりと近付いて行く。
「にょ〜ん」
公園の入り口の木陰でのんびりと寛ぐ仔猫。たまに吹いてくる風に、ヒゲがそよそよとなびいてとても気持良さそう。
『ねぇぇぇこぉぉさぁぁん』
小声で猫を呼びながら、そろそろと近付き少し手前でしゃがんでゆっくりと手を伸ばす。
逃げてしまうだろうかと様子を窺うと、逃げるそぶりも無く、名前の方へと顔を向け見詰めている。
『ねこさん。にげない?』
両足を抱え込むようにしゃがんで小首を傾げる名前の姿に、仔猫は一鳴きするとゆっくりと立ち上がって名前の横まで歩いて来ると、その柔らかい体を名前にスリスリと寄せて来た。
『ほえええ。ねこさん。かぁいいね』
名前がそっと頭を撫でると嬉しそうに目を細めて更に甘えるように体を寄せてくる。
仔猫の割りに大きな体をしたその猫を抱っこしてみたいと思って体にそっと手を伸ばし、『うんしょ』と掛け声をしながら抱えてみる。
仔猫は特に嫌がる風もなく、名前にされるがまま。
『ふぉ…ねこさんおもいぃ…』
辛うじて持ち上げたもののやはり重くて、直ぐに下に降ろしてしまったが、抱っこできた事に満足し、嬉しそうに笑ってしゃがむみ、仔猫の頭を撫でれば、仔猫は撫でてくれたお礼にと思ったのかぺろりと名前の頬を舐める。
ちょっとざらつく猫特有の舌に、くすぐったいと目を細めてる。
『ねこさん。いいこだねぇ』
「にょ〜ん」
名前に好きなように弄られながら目を細めていた仔猫の耳が不意にピクピクと動くと、不意に名前のもとから動いて公園の中へと行ってしまった。
『あー。ねこさぁぁん』
折角仲良くなったのに…そう思うと逃げられてしまったのが残念で、公園の中へとパタパタと走って後を追う。
『ねこさぁぁぁん。どこぉぉ?』
きょろきょろと探しても仔猫の姿は見当たらない。
『うーぅ。ヒバードぉぉ。ねこさんいないよぉぉ』
特に猫に興味が無かったヒバードは、名前の頭の上でずっと丸くなってその様子を見ていただけ。
いや…もしかしたら興味が無かったと言うよりヒバード的には、名前が自分以外の動物に興味を抱いているのが面白く無くて無視をしていたのかもしれない。
『ん…もっかいあえるかなぁ』
残念そうにする名前に、ヒバードが肩まで降りて来て、柔らかい体を名前に寄せてくる。
『あははは。ヒバードぉぉくすぐたぁいよぉぉ』
ヒバードに元気付けられ、またきっと会えるよねと気を取り直して公園の砂場でヒバードと遊ぼうと足取り軽く進んで行く。
少し離れた茂みでごそごそと何かが動く。
そこから、ヒョイと先程の仔猫が顔を出し、キョロキョロと周りを見回す。
「こらぁ、やっと見つけたぞ、このアホ瓜がぁ」
「ふぅーっ」
毛を逆立てながら威嚇の声を出す仔猫の前に、仁王立ちする獄寺。片手には匣を持って。
「久々に出してやれば勝手にいなくなりやがって、面倒掛けんな。さっさと帰るぞ」
反抗する瓜をあけなく匣にしまい込む。
そのまま公園を歩いて行けば、砂場で遊ぶ名前の姿が見えた。
特に何と言う訳も無いが、近付いて声を掛ける。
「よぉ」
『あーっ。はやとぉぉ』
元気に獄寺を指差しながら名前を呼んで、ニッコリと笑う。
獄寺は砂場まで歩いて来ると、名前の前にしゃがみ、名前の指をギュッと握る。
『ほえ?』
「気安く人を指差すなっ」
『ん??』
「……。まぁいいか。」
『ねーねー。いっしょあそぶ?』
遊んでもらおうとおねだり顔の名前に、仕方ねぇなと渋りながらも何気に遊んでくれる獄寺。
一緒に砂場で大きな山を作ってみたり。
『あ、あんね、さっきねぇ、すごぉぉぉかぁいいねこさんがいたんだよぉ』
「あ?ねこだ?」
『うん。あんねぇ、こんくらいでぇ、にょ〜んてね、ねこさんなくんだよぉぉ』
「……それ、瓜か?」
『ん?うぅりぃ?ちがうよぉ、ねこさんだよぉぉ?』
「あ、いや…そ、そうか、良かったな」
『うん。またあえたらねぇ、いーこいーこすんだぁ』
クスクスと猫を思い出して、両手を口元に当てて嬉しそうにする名前。
「ふーん」
自分の匣の瓜だと知らずとはいえ、気に入ってもらえたのが嬉しい気もする獄寺ではあるものの…なにやら変にライバルが増えた様な気もして少々面白くない。
と、そう考える自分に気が付いて舌打ちをする。
べ、べ、別にライバルって…んだそりゃ?名前が何を気に入ったって関係ねぇ。
自問自答する獄寺に気が付いて、不思議そうに見詰める名前は、獄寺の目の前で手を振ってみる。
「うわぁ」
『はやとぉ。だいじょぶぅ?』
キョトンと名前の顔が妙に近くてドキリとする。
「な、なんでもねぇよ」
思わす照れて、名前の体をガシッと掴んで振り回せば、遊んでもらえているのかと勘違いした名前は『きゃーきゃー』と喜こんでジタバタと体を動かす。
「ったくー!!らしくねぇ」
なんて言いながら、名前と遊んで、やっぱり悪い気はしない獄寺なのでした。
「瓜。お前は暫く名前の前にはださねぇ」
「にょ〜ん?」
20100815
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