8月14日*はなびたいかい*
可愛い淡いピンクの生地に大きな牡丹が咲き誇る可愛い浴衣姿の名前は、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねながら歩いていく。
飛び跳ねるたびに、浴衣に蝶々結びに結ばれた兵児帯がふわふわと動く。
『きょうやくーん。はなびっ!はなびっだよぉぉ!』
花火大会に向かう道すがら、我慢できずに思わずはしゃいで駆け出す名前。
「そんなに走ると転ぶよ」
その名前の後をのんびりと、渋い紺の色合いの浴衣を着た雲雀が歩く。
『だいじょぶぅよぉ。きゃーやくんもはやくぅ』
急かされてもマイペースに歩く雲雀のもとに、前を進んでいた名前が興奮した顔で戻り、雲雀の浴衣の裾を引っ張ると、雲雀はそっと名前の目の前に手を差し出す。
「花火の前に怪我すると大変だよ」
『う…』
雲雀が差し出した手を、名前は握ると、はしゃぎながら仲良く手を繋いでゆっくり歩き始める。
今日は楽しい花火大会。ツナたちと一緒に花火を見ようと約束した名前。
そして、大好きな雲雀も一緒にというスペシャルな行事に興奮しない訳がない。
歩きながらニコニコと笑いっぱなし。
『はなびぃ、たのしみだねぇ』
嬉しそうに話す名前に、「そうだね」と小さく返事を返す。
本来ならば、名前と二人でと思っていた花火大会なのに、雲雀にとって邪魔なメンバーが大勢いる時点で楽しさが半減している。
それも浴衣姿で更に可愛い名前を見せるなんてなんて、なんて勿体ない事か。
そう思っても、ツナ達と一緒に花火を一緒に見たいと言うのが名前の希望でもあり、それを曲げてしょんぼりさせる事も出来ない。
「僕はいつからこんなに甘くなったんだか…」
甘いと言っても名前限定の事ではあるけれど…。
溜息と共に漏らされた独り言だったが、はしゃぐ名前の耳には届かなかった。
「あ、名前ちゃん」
「こっちだよー」
並盛神社の鳥居の下での待ち合わせ。既に到着していたハルと京子が、名前と雲雀の姿を発見し楽しそうに手を振っている。
名前もその姿に気が付くと、嬉しそうに手を振り返す。
『ハルちゃーん!きょこちゃん!!』
「名前ちゃん。浴衣可愛いですねぇ。いつもより1000倍可愛いですぅ」
「本当だね。お人形さんみたい」
名前を褒めるハルと京子も浴衣姿で、可愛らしい。
その後に、クロームも浴衣姿で一緒にいる。
「名前ちゃん…。可愛いね」
クロームもニコリと笑って名前に話し掛ける。
女子メンバーに褒められて、雲雀にくっ付いて照れる名前の姿が更に可愛くその仕草で、メロメロになる女子メンバー。
「もー!!!!可愛すぎです!」
「ほんにね」
「可愛い…」
そんな盛り上がりに取り残されるように、既にいるツナ達が名前のもとに集まって来る。
「名前ちゃん。浴衣姿可愛いねー」
「お!いつも可愛いけど、今日はもっといいな」
「…まぁ、馬子にも衣装だ」
「名前。極限かわいいではないか」
更に褒められ照れる名前。
が、先程と違うのは、雲雀の顔が激しく険しいものとなっていることだろうか。
「あ、雲雀さん。今日はどうも。良かったです、ちゃんと来てくれて」
不機嫌そうにしている雲雀に、ヘラリとツナが笑い掛ける。
「仕方ないからね。今度から、名前を使うのやめてくれる?」
「やだなぁー使うだなんて、ただ、みんなで花火が見れたら名前ちゃんも嬉しいだろってみんなで思っただけですよ」
「ふん。ただ名前が目当てなだけでしょ」
「いやいや、そんな事ないですって。ねー名前ちゃん。みんなで楽しいよね」
雲雀と手を繋いで歩く名前に笑い掛ければ、名前もツナに大きく頷き返す。
「まぁいいよ」
花火を見るために、既に確保している場所へと進むメンバー達。
大人に混じって小さな名前が歩く歩幅は、周りがゆっくり歩いてもどうしても足並みが遅れてしまう。それに、履き慣れない下駄という事でもたつく足取り。
足元を気にし始めた名前に気付き、雲雀は軽々と名前を抱き上げた。
『ほぇ』
急に視界が高くなり驚きながら雲雀の首身腕を回す。
その名前に微笑み掛ける雲雀。
「痛い?」
そっと聞けば、首を振る。
『だいじょぶぅよぉ。ちょっとだけだもん』
強がって答えるもの、本当は少し痛い足。
雲雀に抱きかかえられ、嬉しくて笑って甘える名前。
「そう。でも、痛くなくても僕がこのままがいいから」
そう耳打ちをする。
足の痛い名前の為もあるけれど、こうしていれば、名前を独り占めできるというただの雲雀の独占欲も少し入っていたりする。
「あ、名前ちゃんいいですねぇ、雲雀さんに抱っこされて」
ニコニコとハルが話し掛ければ、えへへと笑いながら頷き返す名前。
「あーハルも抱っこされたいですぅ」
冗談交じりに呟けば、キョトンとする名前が「きょうやくんに??」と聞き返すと、ハルは顔を赤らめながら慌てて手を振って返す。
「あわわわ、違いますよー。雲雀さんの腕は、名前ちゃん専用ですから」
なんて事を言うんですか!と赤い顔をするハルは、思わず浴衣の袖で顔を隠す。
「もービックリですぅ」
そんなやり取りをしながら進んでいくと、花火大会の会場も近くなり道もにぎわって道の両脇にイロイロな屋台が並んでいる。
やきそば、お好み焼き、綿あめ、たこやき、リンゴ飴などなど魅力的な屋台に、名前の食いしん坊なお腹の虫が自己主張を始める。
『ふあぁぁ。おみせいっぱいだぁぁぁ』
キョロキョロと眺める名前の目の前に急に何かが現れ驚けば、それはチョコバナナで、山本が笑いながら持って名前に差し出していた。
「ほら、約束しただろ。一緒に食べようって」
『わぁぁ。たけしくありがと』
手を伸ばし受けると、パクリと食べ『おいしい』とご満悦。
いつ山本とそんな約束をしたんだと、山本をじろりと睨む雲雀を気にせず、名前はモグモグと食べるチョコバナナを、雲雀にもと口元に差し出す。
『きょうやくんもぉ、はいっ』
ムッとした顔をしながらも、無言でそれをパクりと食べる雲雀に、『おいしぃねぇ』と笑いかければ、雲雀の機嫌も若干治まっていく。
「たく、雲雀のヤキモチも相変わらずだなぁ」
「余計なお世話だよ」
コワイコワとからかい半分で山本は肩を竦め、もぐもぐと残りのチョコバナナを頬張る名前の頭をポンと撫でる。
「ヤキモチ焼きの旦那を持つと名前も大変だな。いつでもオレに乗り換えていいからなっ」
『ほえ?だん…なぁ?』
頬をバナナで膨らませた名前は、きょとんとして山本と雲雀を見詰めて首を傾げる。
『んとぉ…ばななおいしよぉ』
意味不明な名前の返し。
「そうだ!花火まで時間がまだあるし、みんなで金魚すくいしないか?」
前を歩くツナが不意に思いついて提案をする。
「おおおー。面白そうではないか!極限やろう」
「おっ。オレもやるぜ」
「金魚すくいですか?10代目のご希望なら…」
「あ、ハルも金魚すくい得意です!」
殆んどのメンバーが了解すると、更に…。
「それでさぁ、みんなで勝負しない?」
「はひ?勝負?ですか?」
「10代目、勝負って…」
ツナの言葉にそれぞれ反応するメンバー。
「金魚を一番すくった人が、名前ちゃんを膝に乗せて花火を見れる権!どう?」
その提案にメンバーがピクリと動きを止める。
雲雀も反応し、怪訝に目を細める。
「そんな勝負。僕は認めないよ」
「おやおや、雲雀さんはこの勝負に自信が無いんですか?」
ピクリ。
「ようは勝てばいい訳ですからねっ」
勝負に自信がないと言われれば向きになるのが雲雀の性格。
「いいよ。僕が負ける筈がないからね」
名前を下ろすと、ツカツカと金魚すくいの屋台へと近付いて行く。
ふふふ…。金魚すくいなら雲雀さんに勝てそうな気がする。この勝負もらった!
思った以上にこの作戦がうまく行ったとガッツポーズをこっそりするツナ。。
しかし、その思いはツナ以外のメンバーにもあったりする。
花火を名前と仲良くみれんなら頑張らねぇとな。と、腕まくりをする山本。
極限勝負はいただきだ!名前と京子とで見るぞ!背後に熱い炎を背負う了平。
まぁ、みんなやるなら仕方ねぇ。まぁ、勝ったら…それはそれで…。と、本当は勝ちたいのに心の中でもいい訳な獄寺。
はひっ。雲雀さんには申し訳ないですが、負けませんよぉ。意気込むハル。
ん〜なんだか、楽しそう♪ 空気を読めないながらも参加する京子。
花火が始まったら途中で骸様に替わって…その為にも頑張ろう。私も名前ちゃんと見たい…。何気に燃える闘志をみなぎらせるクローム。
「よし!みんな勝負だっ!」
ツナの掛け声と共に…それぞれの燃える思いでの熱い金魚すくい大会が今、始まろうとしていた。
さて、花火大会は…誰の膝で見る?
『わたしもぉぉ。きんぎょさんすくぃやるよぉぉぉ』
20100815
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