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8月11日*なつのにおい*

冷たい水に足を付けてバシャバシャと両足を踏み締めると、勢いよく水しぶきが飛んで、それが夏の日差しにキラキラと輝く。

公園の噴水の横に人工的に作られた小川。
毎年夏になると、石畳のその場所に水が流され、小さい子供達が水遊びをしようとやって来る。
その子供達に混ざって、名前もはしゃぎながら水遊びをしている。
プールと違って足を濡らす程度ではあるけれど、バシャバシャと足踏みをするだけでも楽しい気分。

『きもちいーねぇ。ヒバードはぁ、おみずあそばないのぉ?』

名前の頭の上で丸くなったままのヒバードからは返事が無く、名前は足元の水をそっとすくうと勢いよくヒバードに水を掛けた。
突然の攻撃に驚いたヒバードは、羽をパタパタとさせ水を払うと、名前の頭から飛び立つって行く。

『あははは。つめたぁぁ』

びっくりさせちゃったと楽しそうに笑う名前なのだが、ヒバードが飛ばした水しぶきもだが、自分の頭の上にいたヒバードに水を掛けたのだから、名前自身も自分の攻撃で髪が濡れてしまっている。
でも、それさえも楽しくて笑ってしまう。

『ハルちゃぁぁん』

公園に一緒に遊びに来ていたハル。ちょっと前まで一緒に水遊びをしていたけれど、ちょっと休憩と、少し離れたベンチで名前の水遊びを見学している。
そのハルへと元気に手を振ると、ハルも笑って手を振り返す。

「はひ〜。名前ちゃんは、いつでも元気ですねぇ」

楽しそうに水遊びをする名前や、他の子供達。
最初は個々で遊んでいたのに、いつの間にか一緒になって水を掛け合い合戦となっている。もちろん名前もその中に入って、人一倍元気に水しぶきをあげて遊んでいる。
その子供達の中で名前が一番可愛く見えてしまうのは、やはり贔屓目で見てしまうハルだからなのかもしれないけれど、やっぱり名前ちゃんが一番だと一人頷いている。

「はぁ、カメラ持って来れば良かったです。可愛い名前ちゃんのショットがいっぱい撮れたのに…そしたら、ツナさんとかにも見せて自慢したのに本当に残念です」



一頻遊んだ名前は、みんなの輪から抜け出して、興奮したままの状態で頬をピンク色にしながらハルのもとへと、パタパタと走って来る。

『はるちゃぁぁん。たのしぃぃよぉぉ』

濡れながらも楽しくてたまらないと笑う名前を見れば、ハルも一緒に笑ってしまう。

「クスクス。名前ちゃん濡れ鼠ですね」

『ん?ねずみさん???』

「えっとですね、えっと・・・凄い濡れちゃった事を、濡れ鼠って言うんですよ」

『ほえぇ…ねずみさんなのぉぉ。あははは、ねずみさんだぁぁぁ〜』

ちゅうちゅうと、ネズミの鳴きまねをしながら動く名前。
ハルはそんな濡れた名前の髪や体を拭いてあげようと持参してきたバスタオルを取り出すと、動き回る名前を掴まえてバスタオルに包む。

「ねずみさん捕まえましたよ!さぁーちゃと拭かないとです」

きゃーっと奇声を上げながらハルの腕の中でジタバタと動いて『つかまちゃたぁぁぁ』と叫びながら、捕まってしまった事がとても面白いらしく大興奮。

「ほらほら、ちゃんと拭かないと幾ら夏でも風邪引いちゃいますからね」

『あははははは』

肌触りの良いバスタオルでハルが優しく自分の事を拭いてくれるのが凄く嬉しくて、笑いながらバスタオルに包まったままハルにギュッと抱きつく。

「はひ?どうしました??」

『ハルちゃん、だぁぁぁいすきぃ』

急に抱きつかれて驚きながらも、名前に可愛く甘えられればハルも嬉しくて堪らない。

「ハルも、名前ちゃんがだぁぁぁい好きですよ」

名前が抱きつくよりももっとギュッと抱きしめてやれば、ハルの言葉に答えるように幸せそうな笑い声をたてる。

ハルちゃんはとぉぉぉてもやさしくて、とぉぉぉてもいいにおい。
ハルちゃんだいすきぃ。

楽しそうにする二人の間に気持のいい風が吹くと、それを感じるように目を閉じ深呼吸をする。
なんだか夏の空気の匂いを感じれるような気分。

「はぁ、なんだか気持がいいですねぇ」

『うん。きもちーねぇ』

のんびりと、のんびりと、夏の幸せな時間を過ごす…そんな1日。



20100811


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