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一歩前へ(ツナ+10)

え!?今、なんて?

自分の耳を疑う。
ちゃんと機能してる?

オレの目の前でにこやかに笑う君に、俺はどんな顔をしているのか分からない。
何も言わないオレに、不満気味に頬を膨らませる。

『もーっ。おめでとうって言う所じゃないかなぁ?』

そ、そうだよな
多分おめでとうって言うのが合っている。
目の前の幸せそうな顔を見れば、友達ならその言葉が自然に出てくるだろう。
でも何故かその言葉を口に出来ない。

『ツナにはさ、いろいろ愚痴ったり、絡んだりして心配掛けたけたから、一番に教えようって思ったんだ』

少し照れながら言う君を見て気付いてしまった。
気付くのが遅いのかもしれないけど…

『ツナもさ、頑張るんだよ』

ガッツポーズをする君に、オレは、咄嗟に何を頑張ればいいのか分からなかった。

『ツナ?なんか変だよ?ツナも頑張って、京子ちゃんにプロポーズしなきゃだよって』

ああ、そうだよな
中学時代からずっと好きだった京子ちゃん。
可愛くて、ちょっと天然で…よく君に頑張れって応援された。
そして、君の恋愛話や愚痴もよく聞かされて…オレ達は何でも話す間柄になっていた。

『ツナはさ、いつも後一歩押しが足りないんだから。人がいいのは長所だけど、短所でもあるんだよ?誰にでも優しいのは、良くもあり悪くもあるの。ここだっ!!て思う時は強引さも必要だよ』

一歩足りない。
その通りだ。
後一歩前に出ていれば、もっと早く気が付いたかもしれない。
君と一緒にいた他愛ない時間がどんなにオレを癒やしていたのかって…

『ツナ?本当にどうしたの?さっきからずっと黙ったままだよ?』

不思議そうにオレの顔を覗き込む君の瞳に、オレの姿が映る。
今だけオレだけの姿を映す瞳。

何考えてんだオレ?
今更だろ?
もう遅いだろ?
君を困らせるだけだ…。

小さく息を付いて、何時も通りの笑顔を作る。

「良かったよ。おめでとう」

『うん』

そうだよ、これでいいんだ。
永遠の別れな訳じゃない。
今まで通り友達で笑い合える。
ただ、君の隣にオレ以外の他の奴いるだけだ。
それ以外は何も変わらない。

『じゃまたね、ツナの邪魔しちゃ悪いから帰るね』

「ああ、また」

手を振る僕ら。
またね。
ほら、また次がある。
これからも…

これからも…



『わっ。何?ツナ?』

「ごめん。無理」

『へ?何?』

白くて細い君の腕を掴んで引き寄せ抱き締める。
『ツナ?』


君を無くしたくない。
遅いなんてない。
諦めたら終わりだ。


腕の中の君にそっと囁くと、驚いた顔。



ごめん。
これから君を困らせるけど…必ずオレに振り向かせるよ。


一歩を踏み出す。



君の幸せは、オレが作るから。



「好きだ。誰にも渡さない」


俺だけを君の瞳に写して


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あきゅろす。
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